研究課題/領域番号 |
21K13268
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
北川 亘太 関西大学, 経済学部, 准教授 (20759922)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | J.R.コモンズ / レギュラシオン理論 / コンヴァンシオン理論 / ウィスコンシン産業委員会 |
研究実績の概要 |
パリで開催されたレギュラシオン学会において「レギュラシオンとJ.R.コモンズの適正価値」という論題で報告をする機会を得た。報告要旨は次の通りである。「レギュラシオン」とJ.R.コモンズの鍵概念である「ウィリングネス」や「適正価値」は似ているが、コモンズの鍵概念は倫理の集団的構成を含意しており、それはレギュラシオニストが十分に目を向けていない点である。レギュラシオン理論が倫理の集団的構成に注目するにはレギュラシオンにかかわる「時間」やレギュラシオニストの調査対象に対する立場を再考することが必要になるが、そのように修正された「集団的行動へのネオ・レギュラシオン・アプローチ」は、レギュラシオニストが調査対象の集団的ないし公共的な倫理に接近する手法であり、さらにいえば、レギュラシオンの再構成に自覚的に関わるための手法になりうる。以上のような流れで、本報告は、コモンズの読解を通じて、レギュラシオニストが自らの研究成果と研究対象の双方に倫理を導入するための一つのやり方や道程を示した。この報告後、レギュラシオン学派の主要な研究者たちと議論や情報交換をする機会を得た。 くわえて、昨年度(2021年度)にコンヴァンシオン学派の主要な研究者との議論から練り上げた、J.R.コモンズの観点からのコンヴァンシオン理論の批評を、コンヴァンシオン学派の最近の共同研究の成果(書籍)についての書評論文として査読付きの英文誌に掲載し、フランスのコンヴァンシオン学派やレギュラシオン学派の一部の研究者から好意的な反応を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度および今年度、フランスの制度学派の主要人物と交流する機会をもち、良質な情報を受け取ったり、J.R.コモンズとフランス制度学派との関連づけで論じるべき点を明確にしたりすることができた。それにより、査読付きの書評論文を完成させることができ、かつ、学会報告論文を完成させることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の上述の仕事をより大きな研究業績にできるように努める。具体的には、J.R.コモンズとレギュラシオン理論とを関連づけた論文をレギュラシオン学派の主要な査読誌に投稿する。くわえて、2023年度は、ウィスコンシン産業委員会による行政を補助線として、コモンズの理論をより分かりやすく説明する原稿を作成する。具体的には、2022年度に構想段階のものとして進化経済学会制度と統治部会で報告したアイデアを、史料で裏づけながら、査読に耐えうる論文として完成させたい。
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