気候変動は、国際的に取り組むべき喫緊の課題である。世界でこの問題に起因する自然災害が多発して甚大な被害をもたらしており、早急な対応が求められている。気候変動に対する具体的な方策を迅速に進めていくには、国だけでなく、企業による積極的な対応が今後ますます重要となる。気候変動のリスクを認識して前向きに対策を講じる企業の数は実際に増えているが、そのような取り組みを促進するメカニズムはこれまで定量的に十分に明らかにされていない。本研究では、何が契機となり、企業は気候変動対応に積極的になるのかを探り、それらの誘因がどの程度企業の対応の促進に影響を与えているのかを定量的に検証した。まず、気候変動対応に関する調査への回答データを用いて、企業毎の気候変動への対応度合いを定量的に計測した。また、契機と考えられる要因として環境政策、企業のイノベーションなどに着目し、複数のデータを用いて定量的に計測した。最終年度でも一部データを追加・更新して分析を進めたが、その結果から、それぞれの要因が企業の気候変動対応にどの程度影響を与えているのかを定量的に検証することができ、環境政策が企業の気候変動対応に正の影響を与えていることが分かった。また、企業の規模や国際競争に晒されている度合いに応じて影響がどのように異なるのかについても考察した。本研究では、企業の気候変動対応を促進するメカニズムを複数の要因を用いて多角的に捉えることができ、パリ協定の長期目標やカーボンニュートラルを実現するために重要な役割を果たす企業の取り組みに関して新たな視点を示すことができた。
|