研究課題/領域番号 |
21K13289
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研究機関 | 福井県立大学 |
研究代表者 |
中井 美和 福井県立大学, 経済学部, 准教授 (30778080)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ESG投資 / ESG経営 / 企業の社会的責任 / ジェンダーギャップ |
研究実績の概要 |
持続可能な開発目標やパリ協定の目標達成には、経済システムの中に持続可能な社会の実現に向けた金融メカニズムを組み入れる必要があり、その鍵となるのがESG投資と言われている。ESG投資市場の拡大に向けて、ESG投資へのモチベーションを理解することは不可欠であるが、日本のデータを用いた研究は非常に限定的である。また、ESG経営の在り方に影響を与える要因についても十分に分析されていない。本研究は(課題1)ESG経営のパフォーマンスに影響を与える要因の解明、そして、(課題2)ESG投資のモチベーションの解明を行うことで、企業・投資家の両者の視点からESG投資市場の拡大に向けた具体的な示唆を与えることを目的とする。 初年度は課題1に取り組んだ。課題1は、a)企業のESG経営、CSR活動の実態・変遷を明らかにすること、b)新型コロナウイルス感染症や東日本大震災の前後で企業のESG経営に変化が見られたかどうかについての分析を行うこと、の2つの研究目的を有していた。a)については先行研究や書籍、企業の報告書等をレビューし、ESG経営のトレンドについてまとめた。b)については先行研究のレビューを行い、推計モデルを構築した。データベースの整備や、推計は次年度に繰越となった。この2つのプロジェクトに加え、c)として、女性の働きやすさが企業のサステナビリティパフォーマンスに与える影響について、分析を行うこととなった。関連研究やレポートのレビュー、研究協力者との議論を通じて、日本企業における女性の働きやすさを示す変数の特定化を行った。プロジェクトb)の分析に必要なデータと重複があるため、次年度にプロジェクトb, c共にデータベースの構築を行い、定量分析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は、課題1のプロジェクトa, bの取り組みのみを計画していたが、新たにプロジェクトcについても研究を開始した。日本は先進国で最もジェンダーギャップが大きく、育休・産休取得率、育休・産休復職率、管理職女性比率が他の先進国よりも低い値となっている。少子高齢化による労働人口減少に直面する日本にとって女性の就業率向上は日本の経済成長の鍵となるが、女性就業率向上に寄与する労働環境の整備はサステナビリティパフォーマンスに反映されているかどうか不明である。これまでの研究で、サステナビリティパフォーマンスは株価に正の影響を及ぼすことが確認されていることを踏まえると、女性の働きやすさとサステナビリティパフォーマンスに正の関係が確認された場合、企業に職場環境の向上や女性役員比率上昇のインセンティブを与える可能性があり、優先して取り組むべき研究課題と考えた。初年度には先行研究のレビューと推計モデルの構築はおおよそ完了した。一方で、想定よりもプロジェクトbの進捗はやや遅れ気味である。以上を踏まえ、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
(課題1)ESG経営のパフォーマンスを示すサステナビリティスコアの収集や、企業の財務情報や労働環境に関するデータを購入し、データ整理を行った上でデータベースを完成させる。定量分析の結果を学会や研究会等で報告し、得られた意見・アドバイスをもとに推計モデルの精緻化を行う。今年度中の論文投稿を目的とする。 (課題2)次年度後半より、課題2への取り組みを開始する。最終年度におけるアンケート調査の実施に向けて、レビューを行い、研究協力者との議論を通じて推計モデルの構築を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に計画していたデータの購入を次年度に持ち越したため。
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