本研究では、入試方法(筆記試験入試、推薦・AO入試)と大学が獲得する学生との関係について、日本の大学入試方法の分析を通じて実証的な知見を提供した。 初年度には、出身高校ランクに基づき、筆記試験入試入学者、推薦・AO入試入学者の特徴をまとめ、推薦・AO入試制度の役割が高校ランクや大学ランクによって異なる可能性を示した。 最終年度までには、大学が獲得する学生が推薦入試の導入でどのように変化しているのかを、簡単な枠組みを示したうえで、代表者の所属大学の業務データとアンケート調査を活用して分析した。一般的に、推薦・AO入試は筆記試験入試よりも早期に実施されるため、推薦・AO入試入学者の中には筆記試験入試のみの場合でも同じ大学に入学した者がいるだろう。また、大学の定員数が事前に決まっている場合、推薦・AO入試の導入により筆記試験入試の枠が減少するため、大学が獲得できなくなる学生もいると考えられる。 分析の結果、推薦入試の導入により、前期一般入試で獲得できる学生とは性別・学力・非認知能力等の点である程度異なる学生を獲得していることがわかった。また、入学後の学業成績の限りでは、推薦入試によって劣った学生を獲得するようになったわけではなかった。このことから、推薦入試は、学生の質をある程度保ちながら多様性を向上させていることがわかった。しかし同時に、推薦入学者の約4割は前期一般入試のみでも獲得できたと予想され、推薦入試が多様性の確保の手段として効率的かは注意が必要である。 本研究期間中に質の高いデータの利用可能性が判明したため、当初の計画を変更し、大学進学する/しないの分析は行わなかったが、推薦・AO入試の存在が大学・学生の組合せに与える影響という点で重要な知見を提供できた。 以上、本研究期間を通じ、大学入試の分析の際に今まで見過ごされていた観点を提示できたことは大きな意義があったと考える。
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