研究課題/領域番号 |
21K13318
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
相澤 俊明 早稲田大学, 高等研究所, 講師(任期付) (00892192)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 幼児死亡率 / サバイバル分析 / 機会の不平等 / クラスター / ランダムフォレスト / 南アジア |
研究実績の概要 |
昨年度は、データの収集、統計分析のプログラムの開発、データの分析を主に行った。本研究のテーマである、「南アジア地域における幼児死亡率の社会経済的な不平等性」を定量的に扱うためのフレームワークを整理し、社会経済状況に応じた幼児死亡率の差を分析するための分析手法を開発した。機械学習の考え方を応用させることで、従来では明らかにされてこなかった不平等性の要因をデータから読み解くことを試みた。 幼児死亡率が依然として高い、南アジア5か国(アフガニスタン、バングラデッシュ、インド、ネパール、パキスタン)の最新の家計調査データ(2次データ利用)を用いて分析を行ったところ、高い社会経済的ステータスをもつ家庭に生まれた子供と、低い社会経済的ステータスを持つ家庭に生まれた子供の間で、生後12か月の間の死亡率(幼児死亡率)に有意な差が見られた。観察された差を分解分析したところ、母親の出産時の年齢等のデモグラフィックな要素の違いに起因する差、両親の教育水準の差に起因する差、家計の生活水準の差に起因する差が観察された死亡率の差と強く関連していたことが明らかになった。これらの結果は、不平等性を是正するためには、社会的にハンディキャップを抱える家庭の子供たちに優先的に政策介入をしていくことの重要性を示唆している。昨年度はこの分析結果を論文にまとめで学術雑誌に投稿したところ、論文の分析手法の開発に関する貢献が評価され、論文はEconomics and Human Biology誌に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は、新しい分析のフレームワークと分析手法を開発することができ、国際学術雑誌に論文を掲載することができたので、大きな進歩があったといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、幼児死亡率の長期的な変化に着目した研究を行いたいと考えている。近年の目覚ましい経済発展や都市化によって、医療サービスへのアクセスが向上し、多くの途上国では、幼児死亡率が大幅に低下しつつある。しかし、国単位で見た時の目覚ましい死亡率低下は、個人単位でみた場合には、大きく印象が異なることがしばしばある。経済発展の恩恵は全ての人が一様に享受できているわけではなく、都市部に住む比較的裕福な人々が大きな恩恵を享受していることは様々な研究で示されている。その一方で、少数民族をはじめとする社会経済的弱者とされる人々の状況は、さほど改善されていない可能性が高い。社会経済的なアドバンテージを持つ人々と、そうではない人々の間で、幼児死亡率の国内格差はむしろ拡大している可能性もある。今後は、幼児死亡率の不平等性の長期的な推移に注目した研究を行うことで、どのような要因が死亡率の減少に貢献してきたのかを明らかにすることができる。また、経済発展がもたらした生活水準の向上は一様ではなく、地域ごと、民族ごとに異質性が見られることが予想されるため、時系列的な分析を行うことによって、今後格差を縮小させるために政策介入が最も必要な人々はどういった人たちなのかを明らかにしていく。どのような要因がボトルネックとなって、長期的な幼児死亡率の格差を生み出しているのかを分析することが研究のねらいである。さらに、幼児死亡率の最大のリスクである、生後4週間の乳幼児期間における不平等性についても研究を進め、幼児死亡率との関連性を分析することで本研究を推進していく所存である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度に、助成金をすべて使用しなかったため、次年度使用額が1709円生じた。2022年度も引き続き計画的に使用していきたい。
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