研究実績の概要 |
本年度は, 日本の株式市場を対象として, 米国の株式市場を対象とした先行研究に倣い, 流動性ショックと株式リターンの関係を調査した。その結果, 日本の株式市場でも米国の株式市場と同様に, ポジティブな流動性ショックが生じた銘柄は, ネガティブな流動性ショックが生じた銘柄よりも将来リターンが高いという合理的ではない現象が観測されることを確認した。この現象は, 流動性ショックに対する投資家の過小反応が原因で生じると考えられる。過小反応が生じる原因について, 投資家の注目度による過小反応仮説と低流動性による過小反応仮説という二つの仮説を検証した結果, 日本の株式市場においては, 米国の株式市場と異なり, 低流動性による過小反応仮説が強く支持されることが示唆された。また, 先行研究とは異なる視点から追加分析を行い, 次のような二つの新しい知見を得た。(1)流動性ショックの織り込みは, リターンが低かった(悪いニュースで流動性ショックが生じた)銘柄群の方が早く, リターンが高かった(良いニュースで流動性ショックが生じた)銘柄群の方が遅い。(2)マーケット流動性ショックが, 個別銘柄の流動性ショックの価格反映に影響を与えており, マーケット流動性ショックによって, 流動性ショックに基づくロングショート・ポートフォリオのリターンをある程度予測することが可能である。これらの研究成果について, 日本ファイナンス学会, JFA-PBFJ Special Issue Conferenceおよびワークショップ「証券市場の諸問題」で口頭発表した。
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