本研究の課題は、第一次世界大戦期から1950年代半ばを対象として、フランスにおける移民政策の形成と変遷の過程を総合的に考察することである。本研究にとって3年目となる2023年度は、昨年度に引き続き、フランスの移民問題の専門家の著作を分析した。とくに1920年代から30年代にかけて、国内外の情勢が変化するなかで、同時代の知識人、学者らの移民問題をめぐる認識がいかに変容したのかを考察した。具体的には、経済学者で、法学者であったウィリアム・ウアリド、レイシストに位置づけられるジョルジュ・モコらの著作を分析の対象とし、1930年代に入って移民問題の専門家の議論に排外主義や人種差別がいかにして影響をもたらしたかを検討した。以上の検討の結果については、研究会で報告を行うとともに、論文にまとめ、2024年度中の公表を予定している。
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