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2023 年度 実施状況報告書

石炭公害の基礎的研究―九州北部の地域史から

研究課題

研究課題/領域番号 21K13333
研究機関長崎大学

研究代表者

友澤 悠季  長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 准教授 (50723681)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワード炭鉱 / 鉱業 / 鉱山 / 広義の公害 / じん肺 / 労働災害 / 公害の原型
研究実績の概要

炭鉱の操業は、労働者を、出水、火災、ガス爆発、落盤等の事故や、長時間労働に伴う呼吸器疾患による生命の危険にさらすが、同時に、周辺環境に対しても、地表の沈下、陥没や傾斜、池堤などの漏水・涸渇、地すべりやボタ山の崩壊など、多様な鉱害をもたらす。本研究の目標は、石炭採掘にともなって生じるこれらの被害を、公害研究の観点から再把握することである。
本年度は主として長崎県北部(北松浦郡、佐世保市)に関する資料調査の傍ら、他の鉱害事例との比較検討作業を行った。九州産炭地のうち筑豊炭田に関しては鉱害に関する資料が得やすいが、長崎においては、産炭量の多い松島・高島炭田は海底炭鉱で鉱害が表面化しにくく、唐津・北松炭田は中小炭鉱が多いため記録が残りにくい状況にある。この特徴を踏まえて郷土史に関する調査を継続し、鉱害復旧事業に関する情報整理を行った。また炭鉱労働を原因としたじん肺患者の運動である北松じん肺訴訟に関する証言読解を合わせてすすめた。
他事例との比較では、著名な金属鉱山である足尾銅山の公害の特徴を検討し、足尾が公害の原型といわれる理由を考察、論文化した。金属鉱山と炭鉱は、扱う資源は異なるものの、明治期に政商によって経営が開始され、労働者の生命と周辺環境を犠牲にしながら発展したことにおいて共通であり、損害に対して示談という手法が取られる点も共通して見られる。
以上の中間的な知見は日本語・英語で研究発表を行うとともに、海外での炭鉱労働、市民運動に関する研究状況の把握を行った。合わせてテキスト等への執筆、市民講座の場での発表を通して社会還元を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

研究成果発表のための準備作業のウェイトが高くなり、市町村レベルでの調査に時間・労力をあまり割けなかったことが理由である。環境破壊としての鉱害と健康破壊としてのじん肺問題の両方を検討する作業にいましばらく時間を要する。ただし論文・著書の発表は実現し、本研究のテーマに関する研究者間での議論も継続しており、研究の進展自体が阻害されているわけではない。

今後の研究の推進方策

長崎県北松地域に集中した調査研究に注力する。北松じん肺訴訟に関する分析・研究を行うと同時に、環境破壊としての鉱害を経験した地域の再生に関しても検討を始める。

次年度使用額が生じた理由

調査の進捗により、あらたに東京方面に存在している資料の存在が判明したため、当該資料の調査に必要な経費を翌年に支出する予定とした。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2024 2023

すべて 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 4件) 図書 (2件)

  • [学会発表] 足尾銅山鉱煙毒事件にみる公害の原型2024

    • 著者名/発表者名
      友澤悠季
    • 学会等名
      環境政策史研究会・国分寺学派研究会合同研究会
    • 招待講演
  • [学会発表] 四日市公害裁判から51年―公害から何を学ぶか2023

    • 著者名/発表者名
      友澤悠季
    • 学会等名
      長崎県地域・自治体研究所主催講演会
    • 招待講演
  • [学会発表] 足尾銅山鉱煙毒事件は何を今に語るのか2023

    • 著者名/発表者名
      友澤悠季
    • 学会等名
      さっぽろ自由学校「遊」主催連続講座
    • 招待講演
  • [学会発表] Grassroots Environmental Thoughts in Japan: Created by the Victims’ Perspective2023

    • 著者名/発表者名
      Yuuki TOMOZAWA
    • 学会等名
      The 9th International Symposium on Environmental Sociology in East Asia (ISESEA-9)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [図書] 〈ひと〉から問うジェンダーの世界史 第3巻 「世界」をどう問うか?(うち、友澤悠季「女性は公害をどう経験し何を問うたか」))2024

    • 著者名/発表者名
      井野瀬久美惠・粟屋利江・長志珠絵編
    • 総ページ数
      266
    • 出版者
      大阪大学出版会
    • ISBN
      4872597796
  • [図書] なぜ公害は続くのか : 潜在・散在・長期化する被害(シリーズ環境社会学講座1)(全体編集および友澤悠季「第1章 足尾銅山鉱煙毒事件にみる公害の原型」を執筆)2023

    • 著者名/発表者名
      藤川賢・友澤悠季編
    • 総ページ数
      320
    • 出版者
      新泉社
    • ISBN
      4787723014

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公開日: 2024-12-25  

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