本研究では戦時下の鋳物工業に及んだ経済統制の展開とその実態を分析した。鋳物工業に対する戦時統制は1938年4月の銑鉄鋳物の製造制限から始まり、機械鋳物生産への転換が強制された。その後、鋳物を外注する機械業者等で鋳物の入手困難が生じ、鋳造品の配給統制へと展開する。40年12月に機械鉄鋼製品工業整備要綱が閣議決定されると、同要綱に基づいて鋳物用途別に指定工場を定める鋳物工業整備要綱(41年9月)が定められた。鋳物工場が指定され、指定工場は特定用途の機械鋳物の生産に専門化することになったが、計画どおりには進まなかった。太平洋戦争末期には原料配給と熟練鋳型工の不足が深刻化し、生産停滞が生じた。
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