研究課題/領域番号 |
21K13337
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研究機関 | 岡山商科大学 |
研究代表者 |
池田 昌弘 岡山商科大学, 経済学部, 講師 (30845946)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 近代アジア米貿易 / ベトナム南部 / メコンデルタ / 自然環境 / 華僑商人 |
研究実績の概要 |
本年度は,論文発表を1本,学会報告を1回,研究会報告を1回行った。論文は,開発初期の米生産について,特に凶作が発生した時期についてとりあげ,どのような自然現象がその要因となったかを分析したものである。河川水位の変化を表した史料と月次での省別生産報告書を対比させたことで,当時の生産状況がかなり具体的に明らかにできたとともに,大洪水が地域の生産活動を麻痺させていく様子が時系列を追って描写できた。自身の研究の方向性を示す試論として,今後は分析対象期間を伸ばして議論を拡大させる予定である。 学会報告ないし研究会報告では,近代アジア米貿易と地域内米集荷,そして民族運動の勃発との関係について発表した。発表では,気象条件の悪化のもとで国際需要が増大するなかで地域内では投機が横行し,そのもとで人種的な対立感情が高まっていく様子を取り上げた。この発表は特定年に焦点を絞った議論であるので,今後は通時的な議論をふまえることでこの年の現象を位置づける必要がある。来年度内に論文として投稿し,掲載されることを目指す。 また,資料収集については国内で実施することができた。入手できたデータは来年度以降の発表に活用する予定である。 来年度以降については,感染症による規制の緩和がすこしづつ緩和されることを見越して,国外での資料収集活動を行うとともに国際学会への参加を予定している。国内の学会発表も並行して行うことで,本年度の成果発信を続ける予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
感染症による規制があるなか,1本の論文発表と2回の研究発表ができたことは適切な進捗状況にあることを示していると思われる。また,資料収集活動が行えたことで分析の幅が広がり,今後つめるべき課題も明らかになった。本研究へのエフォート率に準じた研究時間も費やすことができたため,おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究は,どれも特異な状況下における生産や貿易の動向を迫ったものといえる。今後の方策としては,分析の時間軸を伸ばすことが必要である。そのためには補完すべき史料とデータが多く,フランスとベトナムの文書館への訪問をしなければならない。まずは感染症による規制が緩和されつつあるフランスでデータを収集し,可能な分析を進めたい。また,同時に入手すべき具体的な記述史料をまとめ,準備ができ次第ベトナムへの渡航計画をたてたい。 成果発表については,本年度と同じペースで進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
感染症の状況により,当該年度に予定していた海外出張ができなかった。そのため,次年度使用額が生じた。金額分の使用計画は,次年度も同様に予定している海外出張費用,特に資料収集にかかる経費として充てるものとして考えている。
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