研究課題/領域番号 |
21K13338
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研究機関 | 徳山大学 |
研究代表者 |
呉 贇 徳山大学, 経済学部, 准教授 (70823110)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 中国経営史 / 管理知識の移転 / ハイブリッド化 / 新興国経済 / 中国企業 / 科学的管理法 / 国際経営 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、諸外国の管理知識を吸収し、それらを中国本土の慣行に合わせ融合させた「中国的経営」形成の第1段階(1970年代後半~90年代初頭)を対象に、その過程を明らかにすることである。本年度の計画では、中国政府が主導した外国の経営管理についての学習活動を対象に、政府の意思決定プロセスを解明することである。予定していた中国現地での資料収集はコロナウィルス感染症による渡航制限によって実施できなかったが、デジタル化された文献収集と文献の読解を通じて研究を進めた。主に以下のような発見と成果があった。 諸外国に学ぶ理由として、国営企業の労働生産性を高め、経済の遅れを取り戻すためというのが一般的な説明である。これに対して、冷戦の枠組み(ソ連との衝突により、西欧、アメリカへ接近)、社会主義との親和性、政治指導者の思いなど、政府が意思決定を行う際に複雑な要素が絡みあっていたことが分かった。その結果、特定の国ではなく、日本、アメリカ、西欧諸国から学ぶという複線的な学習ルートが形成された。この発見は、2021年8月8日の第3回中国企業史ワークショップ(オンライン)で発表し、複数の中国人先生からコメントと資料提供を受けた。報告論文を加筆修正し、中国における経済史専門誌『中国経済史研究』に投稿した。 また、研究対象時期と比較する目的で、国民政府時期(1920年代-1940年代)の科学的管理法の導入に関するのデジタル資料を網羅的に収集し、初期的分析を行った。その成果を経営史学会年次大会(2021年12月5日)で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
中国のデーターベースを駆使し、関連資料の収集はある程度でき、すでに入手した資料の分析についても一定の成果があった。しかし、予定していた海外資料調査およびインタビューはコロナ禍により実施できなかったため、研究計画に沿った進捗が少し遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、海外の資料調査とインタビューの実施に向けて準備を進めるとともに、現在利用できる資料の分析を引き続き行う。特に今年度中に、次2点の目標を設定する。1.中国的経営のハイブリッド土台の一つでもある「科学的管理法」の導入詳細をさらに探り、当時の導入が改革開放初期の管理導入への影響を分析し、7月の世界経済史大会(パリ)で報告する。2.学会などでのフィードバックを受けて、投稿に向けての英文原稿を年度内に準備する。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内外の移動制限が徐々に緩和される中、次年度は積極的な調査活動を開始したいため、多額な旅費使用が生じる。ヨーロッパでの資料調査は2022年7月の世界経済史大会(WEHC,Paris)の前後で行い、アメリカでの調査は、2023年3月のアメリカ経営史学会年次大会(BHC, Detroit )の前後で行う予定である。コロナ禍により、海外渡航費用が高騰し、1回あたり(10日間)の予算は約40万円の見積もりである。
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