本研究の目的は遠隔会議を通じたポジティブ感情の共創が心理的資本の醸成に与える影響を明らかにすることである。構成主義に基づく分析によって遠隔的な相互作用を通じた従業員の成長に関する新たな学術的知見を加え経営学の発展に貢献するとともに、増加するテレワークにおける業務パフォーマンスの向上に寄与する。 令和5年度は、文献調査を進めながら構成主義に基づく生体計測データの解釈について、分析の土台となる理論的フレームワークを構築し、これまでの研究結果のとりまとめをおこなった。生体計測を用いた先行研究のほとんどが平均値のような圧縮されたデータについて分析したものに留まる。生体計測の利点である時系列分析を用いたものも、二者間の対応関係を見るもののほとんどは目的変数の絶対値の一致に着目していた。これに対して、構成主義に基づく本研究は二者(以上)の生体データの時系列的な変動の同調によってポジティブ感情が共創されるという現象を実証した。この理論的フレームワークは革新的であり、サービス学会で発表した結果は大会最優秀賞という評価を受けた。 加えて、遠隔会議をする労働者が個人要因および環境要因からどのような影響を受けるのかを調査するためにビネット法による質問紙調査を実施した。分析結果から、労働者は自身だけでなく同僚・組織の利益ためにも遠隔会議の有用性を感じることがあり、それによってポジティブ感情が促進され得ることが示唆された。ここまでの研究結果は複数の英文ジャーナルに投稿中である。
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