2023年度は、前年度の分析結果をもとに研究を推進した。具体的には、大学在学中のキャリア形成活動が、入社後の活躍にどのような影響を及ぼすかについて、追跡調査を行った。分析の結果、以下の2点の知見が得られた。 第1に、大学在学中に「社会人基礎力(スキル面)」を育成することが、入社7・16ヶ月後の「ワーク・エンゲージメント」に有意な正の影響を与えることが確認された。本研究の結果から、在学中のキャリア形成活動時に「仕事内容や社風の理解」だけでなく、社会人基礎力に代表される「能力開発」を行うことが重要であることが示唆された。 第2に、上記の「能力開発」に寄与する要因として、「専属の担当による個別指導」、「社員との交流・同行・座談会」、「産学連携型プロジェクトによる実施」の3点が関連している可能性が確認された。就業体験を行う際に、大学と企業が連携してプログラムを実施すること、各学生に専属の指導担当を付けること、就業体験に加えて社員との交流・同行・座談会などを行うことなどが有効であることが示唆される。 最後に、2023年度はインターンシップ参加後の「選考参加率」、「内々定率」、「入社承諾率」に影響する就業体験(インターンシッププログラム)の特徴を分析した。分析の結果、インターンシッププログラム全体の「期間」が重要な役割を果たしていることが確認された。具体的には、期間が5日間以上の場合、「選考参加率」は5日間未満と有意な差が確認されなかった。一方、「内々定率」については、期間が5日間以上の方が未満よりも約30%高いことが確認された。さらに、「入社承諾率」についても、5日間以上の方が5日未満よりも約20%高いことが確認された。以上の結果から、5日間以上のプログラムは企業にとっても学生にとっても負担は大きいものの、両者にとって有意義な結果をもたらすことが示唆される結果となった。
|