研究課題/領域番号 |
21K13365
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
嶋田 敏 京都大学, 経営管理研究部, 講師 (10760514)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 顧客接点 / サービスデザイン / サービス設計 / 技術資源 / 資源活用 / セルフレジ / 決済手段 / カルテ情報要約 |
研究実績の概要 |
技術の発展に伴い、サービスの電子化・自動化が進んでいる。顧客と技術との関りについて、特に高齢者の活動に着目し、セルフレジのUIや決済手段についての調査を行った。現在のセルフレジUIの利用状況が明らかになるとともに、高齢者にとって使いやすいボタンや文字の大きさなどの組み合わせが明らかになった。説明の文字数を単に増やすだけでは分かりにくいと感じる結果が示された。一方、ボタンを大きくし、スペースに余裕をもって説明を詳細にすると、同じように説明を増やしても分かりやすさが改善されることになった。決済手段については、現金支払いを好む高齢者が一定数存在する。一方、非現金決済を利用する高齢者は現金支払いこそ手間がかかると感じており、認識に大きな違いが見られた。 また、労働者にとって効用が生じる技術活用に関しては、医療サービスを題材に、作業の負荷低減を図るための電子カルテの活用を検討した。カルテ情報の要約機能により、医師事務作業の一つである診療情報提供書作成の負担感が低減した。要約機能の支援によって作業の総時間に統計的に有意な差異は見られなかったものの、作業項目ごとの時間には差異が表れた。要約機能によりカルテ情報を閲覧するのに要する時間が短くなるとともに、その情報を一括して書類に転記するための時間が短縮された。転記(コピペの活用)により書類の文書入力が進むことで直接文言をキーボード入力する時間が短くなり、一方、転記した内容から書類に不要な情報を削ったり、書類の形式を整えるためのレイアウト調整といった書類の編集作業に要する時間が増加した。以上のような作業の内容・質が変わったことが負担感の軽減につながったと解釈できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画書において「実験室実験」と「実務の調査」の二軸で本研究課題を進めることを構想した。本年度は、「実験室実験」の側面としては、医療サービスの医師事務作業を題材とした電子カルテの機能に関する調査・分析を行った。「実務の調査」については、高齢者に関するセルフレジや決済手段の現状を調査するとともに、宿泊サービスを対象に、顧客が初回のサービス利用からリピーターになるまでの一連のサービス体験についてのヒアリングを行った。両軸それぞれの活動が進んでおり、各活動で得られたデータに関する成果を国内の学会において報告している。宿泊サービスでの調査結果については、現在、国際会議での発表に向けた準備をまとめている。 また、2023年度の活動に向け、医療サービスでは医療の現場サイドの体制を一部再構築した上で継続的にデータ取得を行っている。一方、宿泊サービスでは新たな顧客接点の場面についての実顧客によるサービス利用に対する観察を計画しており、現場での調査のためのサービス業者との調整を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
全体の方針としては、次年度も引き続き「実験室実験」と「実務の調査」の二軸で研究活動を推進していく。医療サービスと宿泊サービスについては継続的な研究体制ができているので、前年までの研究結果も踏まえて、現場へのフィードバックなども交えた発展的な調査・分析に取り組む。医療サービスで扱ってきている診療情報提供書は、作成だけでなくその利用者も医師である。そのため、利用のしやすさも見据えた書類作成の効率化・改善に向けた電子カルテと周辺機能についての検討を深める。宿泊サービスについては、顧客の再利用意向につながる要因についての調査を深堀するとともに、ヒトによる接客と技術が貢献可能な形態についての分析を行う。
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