研究課題/領域番号 |
21K13373
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
徐 寧教 神奈川大学, 経営学部, 准教授 (40802244)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 多国籍企業 / 海外孫会社 / 知識移転 / 海外子会社 / 生産システム |
研究実績の概要 |
本研究課題は、多国籍企業の孫会社の設立と役割を明らかにするためのものである。多国籍企業は海外に進出して、海外子会社を設立して海外市場での経営を行うが、時には、海外子会社がさらに海外子会社を設立することがあり、これを本研究では、海外孫会社と呼び、主な研究対象にしている。 2021年度は3つの成果を達成した。その内訳は、学術論文1本、学術発表1回、著書1冊である。 学術論文として、「海外子会社の能力形成とその展開としての海外孫会社設立」という学術論文を『国際ビジネス研究』で出版した。海外孫会社が設立される経緯を海外子会社の能力形成過程を通じて説明した。本国親会社にはない独自の能力を海外子会社が形成し、それを海外に移転して活用するために海外孫会社が設立されることをデンソーコリアと中国の孫会社の事例を通じて説明した。 次に学会発表としては、同様に中京大学の銭教授との共同研究で、「多国籍企業の海外孫会社について」というタイトルで、国際ビジネス研究学会第28回全国大会にて発表した。海外孫会社の独自能力と知識移転の意思決定という2つの軸を用いて、海外孫会社を4つのタイプに分類した。 最後に書籍も出版した。タイトルは『多国籍企業の知識マネジメント:トヨタと現代に見る知識移転ネットワークの形成』というもので、単著として有斐閣で出版した。その中で、海外工場がマザー工場として別の海外子会社を支援する現象について分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度を終えて、研究課題の進捗状況を評価すると「やや遅れている」と評価することができる。現在、新型コロナウイルスの影響で国内および海外の多国籍企業を調査することが困難な状況である。多国籍企業の海外孫会社について研究している本研究課題においては、多国籍企業への訪問調査が必要になるため、そこで大きな遅れが生じている。そのため、2021年度は、2つの方向性で研究を進めることで、その遅れを補った。 1つ目は、過去のデータを利用した研究活動である。過去のデータを用いて、本研究課題の問題意識に照らし合わせることで、新たな視点での研究をすることができた。これは学術論文1本、そして、学術書の刊行という形になった。また、新たな視点について、ほかの学者からのアイデアを取り入れるために学術発表も行った。 2つ目の方向性は文献研究である。多国籍企業の海外孫会社を分析するために、国際経営および経営学において幅広く文献研究を行うことができた。これらの成果を基に、今後行われるであろう訪問調査に備えていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の研究の推進方策については、大きく3つの方向性が考えられる。 1つ目は、文研研究をさらに進めて、多国籍企業の海外孫会社について分析できるフレームワークを完成することである。文献研究の成果については、学会を通じて発表する予定である。 2つ目は、パイロット調査を行うことである。新型コロナウイルスの状況にもよるが、本格的な調査を行う前にパイロット調査を行うことを通じて、過去の研究や文献研究から得た知見と問題意識を現場で確認する。そうすることで、リサーチクェスチョンをより明確に絞ることができるだろう。 3つ目は、パイロット調査の成果をまとめ、本調査を計画することである。本研究課題では、多国籍企業の訪問調査と合わせて質問紙調査によるデータ収集・分析が行われる計画である。よって、パイロット調査の成果を文献調査で得たフレームワークで解釈し、精緻化されたリサーチクェスチョンに答えられるような調査計画を立てる。 これら3つの方向性は順を追って進められるのではなく、同時に推進し、お互い補完していくことを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
洋書の入荷に時間がかかり、納品が年度を超える可能性から購入を見合わせたため、次年度使用額が発生した。その分は2022年度再注文して使用する。
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