研究実績の概要 |
工業デザインにおいては,知覚品質は,色, 素材,仕上げで構成される。色を規定する次元としては,色相,彩度,明度がある。しかし,色の質はそれらの客観的要素だけで決まるものではない。そこで,本研究では,車のエクステリアデザインの文脈にて,以下4つの視点から感性的に色の魅力を高める効果を明らかにした。 (1)光の反射量:色の主観的要因の1つには,物体表面の光を反射する属性を意味する光沢感がある。デザイン性が重視されるSUVでは光の反射量が購入意向に正の影響を与える一方で,経済性が重視されるコンパクトではその効果が乏しいことが明らかになった。 (2)色の二面性:青白い色は,色単体の評価では魅力があるものの,車では負の影響を与えることが明らかになった。したがって,開発フェーズにおいて,デザイン色を検討する際に,色のみで調査をすると判断を誤る懸念がある。 (3)加工:高級車を中心に,自動車メーカーはマット加工をオプションとして提供している。しかし,想定に反して,マット加工は色の知覚品質に負の影響を与えることを確認した。この影響は,エクステリアカラーが白,黒,赤,シルバーのすべてで同様の結果となった。この結果は,業界の慣習的認識を盲目的に信じてはならないことを実務家に訴えている。さらに,エクステリアデザインにおける見切れ線を除去することで,知覚品質が向上することが示された。 (4)プロモーション:自動車業界では,商品を最も魅力的に映すとマーケターが考えた色(赤や青などの有彩色)をプロモーションに活用することが多い。しかし,実際に白や黒などの無彩色の方が販売量が多い傾向がある。検証の結果,保有する色とプロモーションで使用される色は同じ方が魅力的に見えることがわかった。また,Mazdaの魂動デザインのように,色のカラーブランドを付与することで魅力が高まる。
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