研究課題/領域番号 |
21K13390
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
舟橋 豊子 立命館大学, 政策科学部, 准教授 (70760479)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 流通近代化 / フィリピン / 国際比較 / チェーン経営 / 中小小売業 |
研究実績の概要 |
本研究では関根(2008) の残された課題である流通近代化における国際比較の実証研究の積み重ねを引継ぎ、発展途上の資本主義国の事例としてフィリピンを選択し、資料収集と整理をおこなった。具体的には「流通近代化」の定義を各文献から抽出して分析後、「流通近代化」を再定義した。次にフィリピンの大都市として首都マニラとセブ島のセブを選定し、流通近代化の要因のうち資料収集によって分析できる次の4点のテーマについて取り組んだ。①中小小売業の店舗数と総売上の推移、競争力強化の方策②チェーン経営を実施している小売業のリスト化と実施している流通効率化の方策③卸売業の機能④商慣行に関する情報の収集と整理。流通近代化は①中小小売商の競争力強化②チェーン経営形態による流通効率化③卸売業の機能高度化④不合理な商慣行の是正について日本研究から炙り出されている。国際比較に有効かどうかは別途検討されなければならないが、本研究ではこの4点を分析視角として進めた。 フィリピンでは伝統小売業,近代小売業ともに成長する小売セクターのなかで,チェーンストアなどによる近代小売業の店舗数増加がみられる。しかし,その小売業数やチェーン経営を実施している企業は限定的であり,伝統小売業と近代小売業の共存,製造業の系列下にある卸売商の存在や商慣行の維持といったフィリピン独自の経緯にある。そして,流通近代化の共通形態である「大型」と「総合化」は現段階ではみられない。 これまで先進国においては近代小売業の出現と増加にともない伝統小売業が廃れていく傾向にあったが、フィリピンにおいてはこの状況が当てはまらない。フィリピン経済や流通が革新を続けるなか、時代の変革期においてフィリピンの現在の状況を記録することや他国との流通革新の違いを記録に残すことは社会的にも学問的にも重要であろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度は企業や小売店への聞き取り調査や観察調査によって資料では得ることのできない実態を把握する予定であったが、コロナ禍により現地調査をおこなえなかった。そのため、日本でおこなえる次のことに取り組んだ。電子書籍の購入とデータベースの利用によって資料や研究論文を集めた。フィリピンの流通近代化の特徴を掴むため、流通近代化の要因に関する先行研究の整理と政府統計や民間調査会社のデータから、フィリピンの流通業を体系化した。チェーン経営を実施している小売業のリスト化を実施した。 具体的には「流通近代化」の定義を各文献から抽出して分析後、「流通近代化」を再定義した。次にフィリピンの大都市として首都マニラとセブ島のセブを選定し、流通近代化の要因のうち資料収集によって分析できる次の4点のテーマについて取り組んだ。①中小小売業の店舗数と総売上の推移、競争力強化の方策②チェーン経営を実施している小売業のリスト化と実施している流通効率化の方策③卸売業の機能④商慣行に関する情報の収集と整理。 そして、上記4点のテーマについて、①流通近代化には大規模化・チェーンストア化とともに中小小売商の競争力強化が含まれるので関連文献を探した。②チェーン展開以外にも業務効率化や仕入れの仕方、PB商品についても確認した。③発展途上国では、まだ製造企業も相対的に小規模なケースが多く、取引コストの節減や流通在庫の圧縮を図るために、新たに卸売商・集積が出現する例がよく見られる(関根、2008)。中小製造企業と外資企業を中心に巨大製造企業の両者がみられるフィリピンにおいては、どのような特徴が見られるのかを見出した。また、物流チェーンの構築、売場提案などリテイルサポート・サービスの充実など卸売商の機能高度化についても確認した。④特に価格の維持や販売促進などについて支払われるリベートや取引に関わるプロセスについて検討した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度はフィリピンの流通近代化の特徴を掴むため、フィリピン地方都市のバタンガスとナガや農村部のバナウエとボロンガンの流通近代化について次の4点で分析できるよう資料収集をおこなう。要点は①中小小売業の店舗数と総売上の推移②チェーン経営を実施している小売業の流通効率化の方策③卸売業の機能④商慣行であり、データベースの利用によって資料や研究論文を集め、流通近代化の要因に関する先行研究の整理と政府統計や民間調査会社のデータを獲得する。また、可能であれば該当地域を訪問し、要点4点との合致点や相違点をまとめるため企業や小売店の聞き取り調査や観察調査をおこない、資料では得ることのできない実態を把握する。 そして、これまでに得た情報を総合的に分析した結果から、流通近代化の視点で梅津(1971)や関根(2008)などの先行研究などを踏まえて国際比較を実施し、フィリピンがどのような位置づけにあるか、また、フィリピン流通近代化の特徴はなんであるかを導き出す。また、実施調査がおこなえた場合は、その結果を文献や統計データも踏まえながら地域別やフィリピン全体に、先行研究にある流通近代化との合致点や相違点をまとめ、流通構造を体系化し、フィリピン流通近代化の特徴を見出す。2023年度は現地調査と本研究の総まとめとして、研究目的の達成を目指す。 なお、2022年度におこなう予定であった「フィリピンの流通近代化の特徴を掴むため、チェーン経営を実施している小売業のリスト化」を2021年度中に実施したため、2022年度に請求予定であった調査費用を前倒しして2021年度に請求した。その結果、2022年度の予算は減ったもののコロナ禍により引き続き現地調査をおこなえないため、また、おこなえたとしても長期間はおこなえないと考えられるため、研究遂行する上では大きな問題はない。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度におこなう予定であった「フィリピンの流通近代化の特徴を掴むため、チェーン経営を実施している小売業のリスト化」を2021年度中に実施した。そのため、2022年度に請求予定であった調査費用を前倒しして2021年度に請求したが、実際の研究協力者による資料収集に関わる費用(人件費)は前倒し請求金額を下回り残高が出たため、2022年度の現地調査費用に引き当てる予定である。
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