研究課題/領域番号 |
21K13407
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研究機関 | 京都先端科学大学 |
研究代表者 |
呉 綺 京都先端科学大学, 経済経営学部, 准教授 (80847187)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 環境マネジメント・コントロール・システム / 資源効率性 / 循環型経済 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、循環性を指向する環境マネジメント・コントロール・システムを構成する要素を抽出し、企業のエコイノベーションは循環型経済への移行を考察する。初年度は、環境マネジメント・コントロール・システムに関する文献研究を実施した。2022年度では、サステナビリティ会計を研究課題のもう1つのキーワードとして文献調査を行った。環境省2018年の調査によれば、環境会計の導入率は19.6%であり、ガイドライン公表当初と比べて減少傾向にある。日本企業において環境会計が普及しなかった理由として、管理会計と同様に、環境会計は制度会計でなく、トップ・マネジメントの環境に対する意識に左右されると考えられる。また、『環境会計ガイドライン』において、環境保全コストは企業が環境保全のために負担したコスト(私的コスト)のみが対象であり、企業が事業活動の結果、第三者や社会全体が被っている健康被害や環境汚染等の負担(社会的コスト)は対象となっておらず、いかに社会的費用を内部化するかが課題であった。そのために、社会的費用の貨幣換算が重要となっていた。 2015年以降、株主・投資家によるESG投資の拡大により、日本企業においてサステナビリティ経営が急速に進み、統合報告発行企業数も増加傾向にある。その一方で、環境会計の社会的意義は非常に高いが、ガイドラインが公表されて約20年間において、理論と実務の乖離があったと推測される。一方、2021年11月、IFRS財団はISSB(国際サステナビリティ基準審議会)を設立、2022年3月に公開草案を公表しており、海外の動向はサステナビリティ会計基準の統一化に進んでいる。 そこで、環境会計の新しい展開の1つとして、サステナビリティ会計の発展において重要な「社会的費用の内部化」に関する文献レビューを行った。また、サステナビリティ会計の中でも自然資本会計に注目した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度に、研究計画書の通りに環境マネジメント・コントロール・システムの構成要素について整理した。また、昨年度は、環境会計の新しい展開の1つとして、サステナビリティ会計の発展において重要な「社会的費用の内部化」に関する文献レビューを行った。上記の文献研究に基づき、認証基準などの公式・非公式の環境マネジメント・コントロール・システム、およびエコイノベーションで使用されるその他の管理・環境会計手法についてまとめた。そこで、上記の進捗に踏まえ、企業が導入する環境マネジメント・コントロール・システムとCE関連活動の介在について、ダイナミック・ケイパビリティの観点から新たな知見を提供できるフレームワークを構築した。最後、企業の実態を把握するためのアンケート調査の質問票の設計を完了した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方向について、2021年度-2022年度の文献調査および実証分析の結果を踏まえて、ミクロのレベルでは、企業のエコイノベーションは循環型経済(CE)への移行という意味で捉え、標準化されたルーチンやコントロールは、エコイノベーションのプロセス、ひいては循環型ビジネスモデルの導入のために企業によって実施されている。また、エコイノベーションは、本研究では企業の資源を管理するために使用される企業の環境マネジメントおよび会計慣行を変更することを意味する。このような背景から、今後、ダイナミック・ケイパビリティの理論的枠組みからアプローチし、認証基準などの公式・非公式の環境マネジメント・コントロール・システム、およびエコイノベーションで使用されるその他の管理・環境会計手順を分析・測定する予定である。 また、構造方程式モデリングを用いて、企業の循環型環境管理システムと環境能力との因果関係を調査し、日本上場企業のサンプルを用いて検証を行う予定である。本研究は、企業が導入する環境マネジメント・コントロール・システムとCE関連活動の介在について、ダイナミック・ケイパビリティの観点から新たな知見を提供するものである。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度に実施予定のアンケート調査を2023年度へ変更するためである。 使用計画として、質問票の印刷や郵送代などに使用する予定である。
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