最終年度である2023年度には,前年度までに実施した「世代別生活充足度調査」から得られた知見等について,第21回福祉社会学会大会において「過疎地域における生存保障システムの変容」を主題に発表した.また,調査協力をいただいた対象地域で報告会を開催した.加えて,2021年度より準備してきた,長野県の地方都市のうち過疎地域において最低生計費試算調査をプレ調査として位置づけて実施し,集計と分析をおこなった.この調査結果についても,調査対象エリアにおいて報告会を開催した.プレ調査結果から得られた知見と諸課題について住民や行政関係者からも貴重なコメントをいただくことができた.各種の調査結果については「報告書」にまとめ発行した. 以上の一連の基盤的な研究を通じて得られた成果として,「過疎」「限界集落」と呼ばれる地域の実態のみならず,過疎・限界集落という用語とその言説効果について明示していくことの重要性を課題として剔出できた点が指摘できる.これを集権国家の地方創成政策がもたらした政策的帰結として捉え,地方財政とその運用の実情から把握することの重要性が,新型コロナ禍でのインテンシブな調査と研究を通じて明示してきた,ということである. 新型コロナ禍と現在の物価高騰を背景として「ケアの再家族化」が生じてきたことについては,本研究において実証した諸点を手掛かりとし,論文として発表していく予定である.次年度以降は,本研究課題を整理し,発展的研究として深化させていく.
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