研究課題/領域番号 |
21K13420
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研究機関 | 福岡県立大学 |
研究代表者 |
阪井 裕一郎 福岡県立大学, 人間社会学部, 講師 (50805059)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 事実婚 / 夫婦別姓 / 内縁 / 生活史 / 結婚 |
研究実績の概要 |
本研究では、生活史という質的調査法を用い、事実婚・内縁に焦点を当てて、日本社会における家族・結婚規範の様相を明らかにすることを目的に調査を進めてきた。本研究は、文書資料と口述資料を組み合わせた総合的な事実婚の戦後史を描こうという試みであり、初年度である2021年度は、特に事実婚当事者に対して生活史の聞き取り調査を中心的に実施した。 結果として、事実婚当事者9名へのインタビュー調査を実施し、さまざまな年代の事実婚の生活史データを収集することができた。調査を通じて、日本社会における「家制度」や近代家族をめぐる規範の様相を確認できたこと、選択的夫婦別姓制度をめぐる現在の問題状況についての論点・枠組みを整理することができたことなどが主な研究実績として挙げられる。また、複数の女性支援団体や当事者団体において報告機会を得たことで、自身の研究成果を社会に還元することもできた。選択的夫婦別姓制度の実現を求めて活動する多くの人々やグループと交流する機会も得られ、次なる調査に向けての研究ネットワークを広げることができた。 こうした生活史データをもとに、同時代の経済状況や産業構造、政策、法制度、あるいは、階層移動や学歴、職業選択などの状況を客観的な歴史的データ・資料と突き合わせながら、事実婚ないし家族・結婚をめぐる規範・実態の変遷を分析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍における諸々の制約により十分な調査を実施できなかった面もあるが、そのなかでも事実婚当事者9名のインタビュー調査を実施することができたことは大きな成果であった。また、著書や報告を通じて、新たなネットワークが広がり、次年度の調査に大きな弾みがついた。同時に、福岡や広島ほか、オンラインでの講演を含め、数多くの報告・交流の機会を得て、当事者や専門家と議論ができたことで、新たに多くの知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き事実婚当事者の生活史を聞き取る調査を積み重ねていき、その多様性や歴史的変化について調査していく。 また、本研究では、2000年代以降に同居を開始した若年層を対象に生活史データを収集し、結婚をめぐる規範の変容を明らかにすることも目標に掲げている。従来の研究では、夫婦別姓や結婚制度への対抗を理由とした事実婚が注目されてきたが、生涯未婚率の上昇や離婚の増加など、法律婚そのものの自明性が揺らぐなかで、それと対比される事実婚の状況が変化していることが推察できる。この点についても調査を進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
注文していた物品が年度内に入手できないことが分かったため。
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