研究実績の概要 |
昨年度までは、待機を主題化した研究の収集および読解を行ってきた。これを受け、今年度は既存の社会学的行為論との関連のなかで待機の研究を行ってきた。今年度にとりわけ注力したのは、シュッツの行為論とゴフマンの相互行為論における待機の位置づけである。本研究では、主にシュッツ行為論とゴフマン相互行為論に関連する一次文献および二次文献の読解・検討によって、下記の知見を得た。 待機は、シュッツの行為論においては「負の行為」( Schutz, A. [1954] 1962, “Concept and Theory Formation in the Social Sciences,” Collected Papers I: The Problem of Social Reality, (ed.) M. Natanson, Nijhof. =1983, 渡部光・那須壽・西原和久訳「社会科学における概念構成と理論構成」『アルフレッド・シュッツ著作集第1巻:社会的現実の問題Ⅰ』マルジュ社. )として位置づけられる。そうであるがゆえに、待機とは、必ずしも身体的行為を伴わないものであることになる。しかしながら、身体的行為を行っていないこと=何もしていないことは、当該行為者が置かれている社会状況によっては不適切だとみなされる場合がある。したがって行為者は、そうした場合には、自分が待っているということを呈示する必要がある。この点で、待機は「演技」という問題系につながっていく(Goffman, E. 1959, The Presentation of Self in Everyday Life, Doubleday and Company Inc.=1981, 石黒毅訳『行為と演技』誠信書房)。この脈絡について明らかにできたことが、今年度の研究成果である。
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