研究実績の概要 |
本研究は、移民がもつホスト社会への帰属意識を、国民がどのように認識するかを検討することを目的としている。国民がもつ、移民の帰属意識の認識は今までほぼ研究されてこなかった。しかしながら、国民の移民の帰属意識に関する認識は、国民と移民の良好な集団間関係を考える上で学術的に重要である。国民は多くの場合移民が受け入れ社会に対して強い帰属意識をもっていることを望んでおり(e.g., Verkuyten, et al., 2014)、この希望に反している場合、すなわち移民の帰属意識が低いとみなされる場合、国民は移民に対する排外意識を強くもつことがわかっている(e.g., Zagefka, et al., 2014)。 研究対象の国として日本とイギリスを選択する。日本とイギリスは移民の受け入れ状況や移民に関する政策(多文化主義政策、同化主義政策)の点から異なっており、こうした社会環境に応じて人々の認識が変わるのかというマクロ要因について検討する。 方法として、移民のプロファイルをランダムに生成して提示する実験手法(e.g., 年収800万円のイラン出身の移民男性)を用いることにより、国民が、どのような移民に対して帰属意識が強いと認識するのかを検討し、移民の帰属意識認識に関するミクロ要因を明らかにする。プロファイルの中身として、先行研究において移民のホスト社会に対する帰属意識を決める要素として明らかにされてきた要素(De Vroome, Verkuyten, & Martinovic, 2014; Verkuyten & Martinovic, 2012)、すなわち「国籍」「英語能力」「職業」「学歴」「イギリス人の友人数」「自集団の友人数」「被差別経験」をもとに形成する。
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