研究課題/領域番号 |
21K13427
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
五十嵐 彰 大阪大学, 大学院人間科学研究科, 准教授 (90844762)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 帰属意識 / 移民 / 質問紙実験 |
研究実績の概要 |
移民は居住国に対して帰属意識をもち、それが居住国への同化や統合の一つの終着点として捉えられてきた。移民の帰属意識は、居住国に対して抱く愛着のシグナルとなり、国民がそれを察知し、国民が移民に対する態度を形成する。例えば反日であるという理由で日本に住む韓国人が糾弾されることがある。こうした態度形成のためには、国民は移民の帰属意識を認識しなければならない。しかしながら、過去の研究では、移民がどのように自身の居住国に対する帰属意識を形成するかという課題に対して関心が集中しており、国民がどういったシグナルをもとに帰属意識を察知するかが検討されてこなかった。 本課題では、どういった手がかりをもとに、移民の帰属意識を国民が認識しているのかを検証することを目的とする。特に認識の規定要因と制度の影響について日本とイギリスとでの比較検証を試みることを当初の目的としていた。 日本とイギリスにおいてウェブ調査会社の参加者を対象にコンジョイント分析を行い、どの要因によって移民の帰属意識の高低が認識されやすいかを検証する。さらに、制度の影響を見るために、多文化主義政策や同化政策をプライミングした後移民の帰属意識判定に影響が出るかを検証する。 予算の関係上、当初予定していた日本とイギリスとの比較検討は行わず、イギリスのみで実験を行った。イギリスにおいて行った分析の結果、移民の帰属意識を認識する要因は、社会的な要因(国民の友人数、パートナー)及び文化的な要因(言語能力、宗教)であり、経済的な要因はほとんど影響がなかった。副次的な研究成果として、移民の社会関係のあり方が、国民がもつ移民に対する態度に影響を与えることもわかった。他方、制度の影響は移民の帰属意識認識に対して影響を与えていないことがわかった。これらの成果をまとめ、現在2本の論文(うち単著1本、国際共著1本)を英文査読誌に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実際に想定していた日本における実験の実施、そして制度の影響については予算や結果の観点から成果としてまとめることが困難であった。しかし、当初想定していたイギリスにおける帰属意識の認識実験については仮説に近い成果が得られ、英語論文としてまとめることが出来た。また追加の分析により想定していなかった新たな成果を得ることができ、同成果については海外の研究者と共同で論文にまとめ、近々投稿することを予定している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は今回得られた成果を元に、移民の帰属意識が国民の移民に対する態度形成に与える影響について実験を通して明らかにする。本課題はどういった移民に対して帰属意識を認識するかを検討事項としていたが、将来的には移民の帰属意識を固定したシグナルとして扱い、それが国民の排外意識に対してどう影響するかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍において旅費を十分に使用することが出来なかった。次年度仕様分は、今後日本において質問紙実験を行う予定である。
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