研究目的であった移民のアイデンティフィケーションの認識に関する実験をイギリスで行った。イギリス人が移民のイギリスに対するアイデンティフィケーションの高低を認識する際に、移民の経済的、文化的、社会的属性のうちどの変数に効果があるかを検証した。結果、経済的側面は重要ではなく、文化的、社会的な属性が重要であることが明らかとなった。この結果と、先行研究で得られた結果である、移民本人がどのように自身のアイデンティフィケーションを形成するか、という結果とを比較し、どの側面に齟齬があるかを集中して論文としてまとめている。成果は現在海外の社会学の査読付き雑誌に投稿中である。 追加でイギリス人が移民に対して抱く態度の規定要因に関する実験を行った。こちらの実験では、特に移民のもつ社会関係、すなわち移民にとっての自集団ネットワークと、国民とのネットワークのうち、どちらが国民の排外主義に関係があるかを検証した。実験の結果、自集団ネットワークは排外主義に効果がなく、国民とのネットワークは排外主義を低下させる効果を持っていた。社会関係に着目した排外主義研究は先行研究にもほぼ見当たらず、特に有用な成果と考えられる。成果は数理社会学会大会にて一度報告をしており、もらったコメントを下に修正し、論文化した。現在はダブリン大学の研究者とともに論文として投稿中であり、社会学のトップジャーナルからR&Rをもらっている段階である。
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