本研究は、沖縄のパイン産業を冷戦期アジア太平洋の社会構造において捉え、アメリカ主導の研修事業にかかわった移民ネットワークの働きをまず明らかにし、そのうえで米軍占領下沖縄は複数の移民ネットワークが交錯する結節点であったのではないか明らかにするものである。当初の予定では、具体的にはおもに以下の2つの課題に分けて研究を進めるものとした。1つ目は、農業実習生を沖縄からハワイへ派遣するプログラムについて、移民ネットワークとの連関を軸に分析するものである。2つ目は、沖縄のパイン産業において重要なアクターである華人ネットワークのかかわりについて分析するものである。
2023年度は、米軍占領期沖縄からハワイへ農業実習生を派遣する事業の実施とその経緯、さらにハワイ在住沖縄系住民のかかわりについて重点的に調査をおこなった。これまで実施できなかったハワイでの調査も9月に実施でき、その成果を論文にまとめた。
先述したように、当初は2つ目の課題である華人ネットワークとのかかわりについて、シンガポールで文献資料収集をおこなうことで研究を進める予定であったが、コロナ禍や勤務校の業務の関係で十分に海外調査を実施することが難しくなった。この2つ目の課題については、新たな研究課題において取り組みたい。また、1つ目の課題にかかわるハワイへの農業実習生派遣事業については、当時の沖縄を統治する最高機関であるUSCAR主導で始められたものではないことを明らかにし、実施経緯やハワイ在住沖縄系住民および中心的なアクターの働きについて論文にまとめた。
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