研究課題/領域番号 |
21K13433
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
藤田 典子 早稲田大学, 国際学術院(アジア太平洋研究センター), その他(招聘研究員) (30898341)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 家族 / ペット / 共生 / 日本 / 社会変容 / COVID-19 |
研究実績の概要 |
2021年度は (1)学会参加および先行研究レビュー、(2) 近隣地域でのフィールドワークを実施した。 (1) 2つの学会(11月に日本社会学会、3月にヒトと動物の関係学会)にオンラインで参加した。前者では、犬飼育と猫飼育の相違、またヒトと動物の共生社会の意味の深さについて学んだ。後者では、保護猫活動の現場の挑戦について、また犬・猫飼育に限らず広く動物を視野に入れた社会における様々な課題について学んだ。 先行研究レビューでは、概して3つの重要な視角を得た。第一は、家族の変容およびケアの視点で、ペットオーナーが暮らす社会環境、そして個人の生活(仕事や家庭)が犬・猫飼育にもたらす影響である。第二は、ペット飼育にまつわる社会的課題の視点で、犬・猫それぞれに関して、米国西海岸の街での共生社会醸成プロジェクトについての著書や日本社会の歴史研究から多くの示唆を得た。第三は、人類と動物の共生という視点で、人類と動物がともに生きることや人類が動物を「使う」ことの意味、そして倫理面での挑戦等、哲学的視点を学んだ。 (2) 近隣でのフィールドワークでは、兵庫県内の公園や街、犬関連イベントを訪問するとともに、動物専門学校および地方自治体の動物愛護・管理センター担当者へのインタビューを計3件実施した。前者においては、「令和2年全国犬猫飼育実態調査」(日本ペットフード協会 2020年)および「ペットビジネスに関する調査」(矢野経済研究所 2021年)が指摘するように、新型コロナウイルス感染拡大によって、新規のペット飼育者が増え、そしてペットケア用品やペットとのコミュニケーションツールなどが好調であること、すなわちコロナ禍でペット市場が拡大傾向にある可能性について実感した。後者では、動物管理・愛護者が関係業者およびペットオーナーに対して啓発活動や教育・訓練など行う役割を担っていると学んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度はオミクロン株の流行、そして各自治体の規制により、近隣でのフィールドワークにも制限が生じた。ペットオーナーへのインタビューおよびペット飼育関連業者へのインタビューは、次年に行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の研究の柱は、(1) フィールドワークと (2) 学会報告である。 フィールドワークでは、既に4月より、ペット管理業の様々なアクターへのインタビュー調査を進めている。ペットオーナーとペットがより暮らしやすい社会になるために、各対象者(獣医師や動物看護師、トリマー、トレーナー、販売業者、保管者、展示者等)がそれぞれどのような役割を担っているかについて探っている。同時に、業界のジェンダー化された労働市場構造にも着目し、その構造がペット市場にいかなる影響を及ぼしているかも探究している。 調査は、全国のペットオーナーに対しても30件実施する予定だ。令和の日本で、ペットオーナーが飼い犬・猫をどのように意味づけ、どのように行動しているのかをインタビューおよび参与観察を通じて明らかにし、「家族ペット」(山田 2004)の現代での意味を探究する。そして、当現象が日本社会にどのような影響を及ぼしているかについても探っていく。 さらに、動物愛護業のアクターへの調査も予定している。いわゆる「保護・譲渡活動」に関わるアクターである。彼ら彼女らが実践するセイフティネットや啓発活動が、ペット飼育社会そのものに与える影響についても、探求する。 2本目の柱となる学会報告は、2023年3月に米国で開催予定のアジア研究協会(Association for Asian Studies)で行う予定である。「現代日本社会におけるペット飼育:新しい行為は、新しい意味をもたらすのか(仮)(Having Pets in Contemporary Japan: New Practices, New Meanings?)」というテーマで、ペット飼育に関連するアクターの役割と課題について描く。報告後は、人類学分野のジャーナルに投稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度はオミクロン株の流行、そして各自治体の規制により、近隣でのフィールドワークにも制限が生じた。ペットオーナーへのインタビューおよびペット飼育関連業者へのインタビューを実施できず、予算として計上していた「調査交通費」および「謝礼」などの費用が発生しなかった。これらのインタビュー調査は、2022年度に行う予定である。
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