2023年度は、「家族ペット」視点でフィールドワークおよび学会報告を実施した。 関西圏の街で暮らす20代から50代の犬飼い主19人(女性16人男性3人)に、質的インタビュー調査を実施し、「家族としてのペット」について文化・社会人類学的に調査した。インタビューでの主な質問は、ペット飼育と家族についての基本情報に加え、「あなたにとってペットはどのような存在ですか」「『ペットが子どもの代わり』であると言われることがありますが、あなたはどう思いますか」であった。 結果、以下の発見があった。1点目の質問に対して、多くの対象者が「ペットは家族」であると答えた。一部「家族」以外の回答もあったが、その場合もペットが家族と同等に親密な存在に位置づけられていた。現代日本においても「家族ペット」に揺らぎはない。 2点目「ペットが子どもの代わりか」は本研究の主の問いでもある。本質問に対しては意見が分かれたが、対象者の意識と実践を紐といていくと、ペットを人間の子どもの代わりとみなして飼育している人はおらず、人間の子と同じように(時には「成長して巣立っていく」人間の子よりも)「かけがえのない」存在で、「世話」、すなわちケアの対象者として「動物」を飼育している点が明らかになった。その中で、超・小型犬には日本特異な子育て実践が採用されており、米国の先行研究にはなかった人とペットの関係が見いだされた。 以上の結果は、2024年3月15日にシアトルで開催のAAS(Association for Asian Studies)の年次大会にて、研究者が共同企画したパネルPets in Changing Japanにて Is your Dog your Child?というテーマで報告した。その際、2022年度にかけて実施の本研究のもう一方の視角「ペット共生社会」論にも触れ、本研究の集大成とも言うべき報告になった。
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