研究課題/領域番号 |
21K13435
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研究機関 | 松山大学 |
研究代表者 |
吉武 理大 松山大学, 人文学部, 講師 (20879407)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 貧困 / 格差 / ひとり親世帯 |
研究実績の概要 |
近年、子どもの貧困やひとり親世帯の貧困が指摘されているが、現在のコロナ禍においては、さらに深刻な問題となっている。そのような中で、本研究は、ひとり親世帯における格差と貧困の再生産の問題に着目し、そのメカニズムと、それに即した支援策の可能性について、実証的に明らかにすることを目的としている。本研究では、貧困の再生産が生じるメカニズムを明らかにするとともに、ひとり親世帯内部における意識やサポートの差異、社会保障制度の利用につながらない要因にも着目し、効果的な支援策の提示を行う。 2021年度は、第1に、国内外の貧困や社会保障、社会的排除に関連する研究の知見を整理するとともに(2022年3月,「排除と貧困」山本努編『よくわかる地域社会学』ミネルヴァ書房,194-207頁)、全国調査データの二次分析によって、および貧困世帯の子どもの教育における不利について検討を行った(2021年6月,「生活保護世帯の中学生の進路の意識における格差―全国調査の計量分析の結果から」『松山大学論集』33巻2号,45-64頁)。第2に、ひとり親世帯における意識やサポートの差異に関する研究報告を行った(2021年7月,「ひとり親世帯が抱える困難とサポート」第144回日本社会分析学会例会,学会報告)。 その他、関連領域の研究成果について書評を執筆し、家庭への介入や支援における困難に加えて、新型コロナウイルスによる「感染の不安」を理由とした介入の拒否の問題、居住地の移動による孤立化の問題について整理した(2022年3月,『「抜け殻家族」が生む児童虐待―少子化社会の病理と対策』書評,西日本社会学会『西日本社会学会年報』19-20合併号,97-98頁)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、国内外の貧困や社会保障、社会的排除に関連する研究の知見について、文献資料を収集し、概念や知見の整理を行うことで、書籍として報告することができた。また、貧困世帯の子どもの教育における格差についても、論文として報告することができた。 新型コロナウイルスの感染拡大によって国外学会への渡航と県外団体への調査はできなかったが、当初は2022年度に予定していた研究計画の一部であった、ひとり親世帯における困難やサポートに関する研究を前倒しで行い、学会報告として研究成果を発表した。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの感染状況を考慮したうえで、ひとり親世帯や貧困世帯およびその支援者・支援団体に対する調査と、全国調査の二次分析によって、格差や貧困の再生産とその支援策、および経済的な側面に限定されない困難とその支援について、研究を行う予定である。加えて、引き続き、関連する研究について文献を収集し、概念や知見の整理を行う予定である。また、ひとり親世帯における困難やサポートについても、引き続き、研究の成果をまとめる予定である。 今後、新型コロナウイルスの感染状況が改善されず、限定的な調査となる場合には、全国調査のデータ分析を進めるとともに、近隣の団体の調査やオンラインによる支援団体の調査等を進めることで、研究課題の進歩を目指す予定である。
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