研究課題/領域番号 |
21K13435
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研究機関 | 松山大学 |
研究代表者 |
吉武 理大 松山大学, 人文学部, 准教授 (20879407)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 母子世帯 / 離婚 / サポート / 孤独感 |
研究実績の概要 |
近年、子どもの貧困やひとり親世帯の貧困が指摘されているが、現在のコロナ禍においては、さらに深刻な問題となっている。そのような中で、本研究は、ひとり親世帯における格差と貧困の再生産の問題に着目し、そのメカニズムと、それに即した支援策の可能性について、実証的に明らかにすることを目的としている。本研究では、貧困の再生産が生じるメカニズムを明らかにするとともに、ひとり親世帯内部における意識やサポートの差異、社会保障制度の利用につながらない要因にも着目し、効果的な支援策の提示を行う。 2022年度は、第1に、ひとり親世帯における困難やサポートに関する知見を整理するとともに、全国調査データの二次分析とひとり親の支援団体の調査によって、母子世帯の母親の孤独感と社会関係による緩和の可能性について検討を行った(2022年9月,「母子世帯の母親の孤独感と社会関係」日本社会分析学会監修、山下亜紀子・室井研二編『社会の変容と暮らしの再生』学文社,103-120頁)。 第2に、全国調査の分析の結果、家族問題(特に離婚問題)の負担感の強さや、離婚問題に伴って生じる転居や経済的困窮、心身の不調などの困難について明らかにし、専門家や周囲の支援だけでなく、精神的なケアも重要であることを指摘した(2023年2月,「家族に関する問題における負担感の意識と対処行動」佐藤岩夫・阿部昌樹・太田勝造編『現代日本の紛争過程と司法政策―民事紛争全国調査2016-2020』東京大学出版会,415-429頁)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、ひとり親世帯における困難やサポートに関する知見について、文献資料や調査結果を収集するとともに、全国調査データの二次分析とひとり親の支援団体の調査を行うことで、母子世帯の母親の孤独感と社会関係による緩和の可能性について、書籍として報告することができた。 新型コロナウイルスの感染拡大によって国際学会への渡航はできなかったが、全国調査の分析および県内外の支援団体への調査によって、ひとり親世帯における困難やサポートに関する研究を行うとともに、離婚関連の問題を経験することの困難や精神的なケアの重要性も明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの感染状況を考慮したうえで、地域におけるひとり親世帯や貧困世帯およびその支援者・支援団体に対する調査を行うとともに、格差や貧困の再生産とその支援、および経済的な側面に限定されない困難とその支援について、研究を行う予定である。加えて、引き続き、関連する研究について文献を収集し、知見の整理を行う予定である。また、ひとり親世帯における困難やサポートについても、引き続き、研究の成果をまとめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属機関の研究費の執行可能時期が2月末までであったため、年度末の調整が遅れてしまい、一部の書籍の入荷が間に合わない状況となったため。
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