研究課題/領域番号 |
21K13437
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
新藤 雄介 福島大学, 行政政策学類, 准教授 (30773064)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 戸坂潤 / 翼賛会 / 翼賛運動 / 温泉厚生運動 / 治安維持法 / 出版法 / 渋谷定輔 |
研究実績の概要 |
今年度は2年目ということで、1930年代から40年代の社会運動とメディアの状況について、計画の(Ⅱ)『農民闘争』挫折後の活動とメディア、(Ⅲ)翼賛体制期における翼賛活動への参加、を中心に調査と研究を進めた。 論文としては、「戸坂潤『技術の哲学』が囁くメディア史――透明化したメディアを可視化する方法」『メディア史研究』52号を刊行した。この論文では、1930年代の社会運動とメディアの関係について戸坂潤の思想に焦点を当てて検討を行った。 また、発表では、「(元)農民運動家と翼賛会の握手――戦時下の社会運動の位相」第2期第15回史料データセッション研究会(8月)で報告を行った。渋谷定輔の1941年7月~11月にかけての未刊行日記があり、その中で渋谷が温泉厚生運動を通して、翼賛会と接近していく様子が記されている。ここから、社会運動家と翼賛会との関係の検討を行った。 加えて、発表では、「末端の社会運動家の弁明――治安維持法違反並出版法違反の取り調べ記録」」第2期第19回史料データセッション研究会(3月)で報告を行った。社会運動とメディアの関係をより具体的かつ多角的に捉えるために、新潟県立文書館に所蔵されている『昭和前期司法関係文書』を使って、社会運動と機関紙などのメディアの関係について検討を行った。 また、「大尾侑子著『地下出版のメディア史 エロ・グロ、珍書屋、教養主義』(慶應義塾大学出版会、2022年)書評会」日本メディア学会第38期第26回研究会(メディア文化研究部会)(1月)で当該書籍の書評を行った。これにより、1930年代から40年代の社会運動とメディアの状況について、左翼運動とは異なる視点からの検討を行うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
渋谷定輔文庫の資料を使って、社会運動とメディアの関係を捉えることが一定程度できているためである。その一方で、より具体的な関わりについては、文庫の資料からでは見えて来ない部分もあったため、新潟県立文書館の『昭和前期司法関係文書』を使い、具体的な関係を捉えられるように調査を行って補った。 また、翼賛運動との関係については、渋谷の日記だけでは当時の大きな動きが不明なため、『大政翼賛運動資料集成』で復刻されている『大政翼賛会会報』『大政翼賛』『翼賛政治会報』『翼賛壮年運動』『地方協力会議』『地方文化協議会会議録』『中央協力会議会議録』などの資料収集を行った。これにより、翼賛運動の全体的な動きの中で、渋谷の活動を位置づけることが可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は計画通り、(Ⅲ)翼賛体制期における翼賛活動への参加、(Ⅳ)戦後の運動再建におけるメディア戦略と運動ネットワークの再構築、を中心に調査と研究を進めていく。 ただし、翼賛運動について特に地方での具体的活動状況については、重要ながら未開拓な部分が多く残されている。これについては、個別の資料について所蔵機関への問い合わせなどを含めて、当初の計画より広く調査を進めることとしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
『日本読書新聞』の購入を計画していたが、残金と価格との関係から次年度の購入とすることにしたため、次年度使用額が生じた。
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