今年度は3年目の最終年度ということで、1940年代の社会運動とメディアの状況について、昨年度に引き続き計画の(Ⅲ)翼賛体制期における翼賛活動への参加、に加えて(Ⅳ)戦後の運動再建におけるメディア戦略と運動ネットワークの再構築、について調査と研究を進めた。 単著としては、『読書装置と知のメディア史――近代の書物をめぐる実践』(人文書院)を刊行した。この本では、第7章で翼賛体制期における読書運動を取り扱った。 論文としては、「書評 大尾侑子『地下出版のメディア史――エロ・グロ、珍書屋、教養主義』」『メディア史研究』54号、「農民運動家における挫折と翼賛体制――渋谷定輔にとっての運動の経験」『行政社会論集』36巻2号、「一九三〇年代における図書館と地域の諸相――都市型独立館と小学校付設簡易図書館」『メディア史研究』55号を刊行した。これらの論文では、翼賛活動への参加や、それに至る直前の時期の地域の運動などを取り扱った。 発表では、「1930年代における図書館と地域の諸相――都市型独立館と小学校付設簡易図書館」メディア史研究会2023年度研究集会(9月)、「蓑田胸喜の戸惑い――昭和研究会への批判と否定しがたさ」第2期第27回史料データセッション研究会(11月)で報告を行った。これらでは、翼賛体制に至る時期の地域の運動の様子や、翼賛体制期の国家主義者の左翼運動への認識を検討した。 また、戦後の運動再建期については、『日本協同組合新聞』などの資料の調査と収集を行った。
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