研究課題/領域番号 |
21K13439
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
麦山 亮太 学習院大学, 法学部, 准教授 (90895913)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 社会階層 / 社会移動 / 職業 / 労働市場 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、現代日本において職業が不平等の生成にとっていかなる意味を有しているのかを、社会階層研究の立場から実証的に明らかにすることにある。2022年度は以下の3点について研究を進めた。 第1に、「社会階層と社会移動全国調査」「東大社研・若年壮年パネル調査」「日本版総合的社会調査」の合併データを使用して、親の職業的地位が本人(子ども)の地位達成に与える影響を本人の学歴別に検討した研究を国際学会にて報告した。本分析結果は現在査読を経て、改稿中である。 第2に、職業間不平等のメカニズムを探求するため、2020年度に労働政策研究・研修機構より公開された日本版O-NETの職業情報を国内社会調査データ(社会階層と社会移動全国調査ならびに就業実態パネル調査)とマッチングさせたデータをもとに、数本の論文を執筆している。その成果は数理社会学会が発行する『理論と方法』誌(近刊)、労働政策研究・研修機構が発行する『日本労働研究雑誌』誌に掲載されている。さらに、コロナ禍における階級・所得・学歴間におけるテレワーク利用機会の格差拡大のうちどの程度が職業特性によって説明できるかを検討した論文を間もなく国際誌に投稿予定である。 第3に、本研究の応用的な事例として、どのような地域レベルの条件があれば出身階層(親の職業ならびに学歴)による教育機会の不平等が縮小するのかを、大学定員の地域間偏在に着目して検討した。結果、地域における大学定員の増加は当該地域の大学進学率を高める効果を持つものの、その効果は必ずしも出身階層によって大きく異ならず、出身階層の影響力は地域レベルの機会の変化に関して頑健であることが示された。本研究は現在論文執筆ならびにさらなるデータの収集構築を進めている途上である。 第4に、労働市場における不平等と家族形成との関係性に関わる3本の論文を執筆した。これらは現在査読中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」に示した第1の研究課題および第3の研究課題についてはすでに複数本の論文につながっており、当初の計画以上の進展がみられると評価できる。他方、第2の研究課題については先行研究の検討を進めたところ再考の余地があると判断し、その分析方針などについて現在再検討の途上であって特段の進捗がない状態である。しかしながら、研究全体として見た場合には、現在のペースで進めていけば、国際誌への複数の論文掲載など、当初の計画以上の研究成果の産出が可能であると見込まれる。以上、当初の計画以上の進展をみた部分と、当初の計画から変更を余儀なくされた部分があるという両面があることから、総じておおむね順調に進展していると評価することができる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は以下の4点について研究を進める。 第1に、現在投稿している論文、ならびに間もなく投稿・再投稿可能な論文については投稿し、公表までの歩みを進める(先の研究実績の概要1-2, 4に対応)。 第2に、現在途上の論文(先の研究実績の概要3に対応)については迅速に分析・執筆を進め、本年度中の論文投稿を目指す。 第3に、本研究の過程で得た示唆にもとづいて新たな研究アイデアにかかわるデータの構築を進める。 以上の点を通して、初年度、2年目以上の研究成果の公表・公刊につなげることを今後の研究の推進方策として記す。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額として生じた2,131円が今年度予算で消化するに難しい小さい金額であったため。今年度予算のうち消耗品購入費用、英文校閲費、あるいは旅費等に合算するかたちで使用予定である。
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