研究課題/領域番号 |
21K13442
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
河村 賢 大阪大学, 社会技術共創研究センター, 特任助教(常勤) (20802846)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | デュアルユース / 科学技術倫理学 |
研究実績の概要 |
2021年度はコロナ禍の継続によりアメリカのアーカイブでの資料収集を行うことはできなかった。代わりに、公刊資料(特にキャメロット計画の頓挫そのものを同時代に扱った論集・資料集であるHorowitz編著)と二次文献に基づき、研究のアプローチを確立することを試みた。また、むしろ軍事的に利用されうる科学研究への政府による研究支援の是非というキャメロット計画論争の中心にあった論点そのものを取り出し、これを自然科学や工学における軍事研究やデュアルユース研究の問題にまで一般化したうえでそこに含まれる倫理学的な問題を検討する研究を進め、こうした理論的・倫理学的な研究に関しては一定の成果を得ることができた。 特にこの倫理学的な研究を進めるなかで明らかになったのは、科学者の責任を問うことと科学者というカテゴリーを持つ人に対して我々が抱いている規範的期待の間の関連性である。科学者の行為が単なる自然現象ではなく人間の行為であるがゆえに、行為が因果的にもたらした帰結のうち特に科学者に対する規範から著しく逸脱したような形で生じた結果に対しては我々は責任を問うことができる。そしてこの我々があるカテゴリーと結びつける規範的期待の内容をどのように確定するかということが、キャメロット計画に関わった社会科学者たちを非難する論者の議論においても鍵を握るはずだという見通しを得ることができた。このように規範倫理学的な基礎固めを行うことで、歴史的資料を分析するための視座を得るということが、今年度の研究の達成であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍の継続的拡大のため、アメリカに入国して資料調査を行うことは断念せざるをえず、オンラインで収集可能な資料の分析や、デュアルユース研究の倫理的問題の検討といった理論的作業のほうに注力せざるをえなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2022年5月の時点では、コロナ禍についても一定の見通しが付き、このままの情勢が推移するならば年度の後半には現地調査を組み込むことが可能であると思われる。また、近年拡大しているインターネットを通じた資料公開制度や、もともと一般市民に対する情報公開に注力してきたNational Security Archiveのデジタルアーカイブなどを積極的に利用することで、必ずしも現地調査を行わずともキャメロット計画に関する一次資料を収集することで、実際の分析へと研究の段階を進めていくことができると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため当初予定した出張が延期になり旅費が支出できなかったため次年度以降に回す必要が生じた。
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備考 |
本研究計画に関連して行われた特に自然科学・工学における科学者の責任論の現代的展開に関する共同研究についてのホームページ。
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