本研究の意義は、1960年代末における人間科学・社会科学の再編成の過程について、その論争を生んだ人間・社会科学への資金援助のあり方を結びつけて知識社会学的な分析を行う点にあった。従来は異なる学説間の論争や同時期の社会状況と漠然と結びつけられる形で理解されてきた1960年代における知識への懐疑の進行を、大学とシンクタンクの機能分化の帰結として理解することが可能になった。近年の日本においては、基礎研究部門が大学から削減される一方で、防衛省など政府セクターからの直接の資金援助は増大しているが、本研究は、政府セクターと人間・社会科学が接近した近過去に何が起こったかというケーススタディを提供した。
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