研究課題
本研究が当初2023年度に遂行することを想定していたのは、「これまでに発生した不確実性の高い災害に関するリスク・コミュニケーションに取り組むうえで、テレビ局が直面してきた課題はいかなるものか」というテーマについての論文発表と、「テレビ局の規模に応じて災害リスク・コミュニケーションに関する課題や意識がどのように異なり、どのような参画の仕方が想定されるか」というテーマに係る学会発表である。前者については、新型コロナウイルスの感染拡大状況の長期化に伴い、2022年度に完遂した研究をさらにアップデートし、国際学会で発表するに至った。後者については前者の延長として特定地方テレビ局との議論を重ねるなかで、「各ステークホルダーができること/できないこと」を開示するなかで関係構築を図るリスク・コミュニケーションを行うにあたって、「経営に悪影響を生ぜしめるのではないか」との疑念を払拭することが困難であることが明らかになった。この点についてはさらに分析を進める予定である。併せて、新型コロナウイルスの感染拡大状況の長期化に伴い実施を延期していた「テレビ局による情報発信総体がメディア利用者において現代社会のメディア環境のなかでどのように意味づけられているか」という問いを明らかにするためのオーディエンス研究について、900名を対象としたアンケート調査を実施し、結果の速報発表を実施した。これについてはさらに分析を深め、2024年度内の論文発表を予定している。本研究の成果に基づき、2023年度には、論文発表1件(IAMCR LYON23)、国際学会発表1件(IAMCR LYON23)、2回の国内学会発表(社会情報学会(SSI)学会大会、社会情報学会 東北支部研究会)、2回の市民向けワークショップ(仙台市、いわき市)、学外での講演1件(京都大学医学部附属病院)を行った。併せて、1件のメディア取材を受けた。
2: おおむね順調に進展している
2023年度は、新型コロナウイルスの感染拡大状況の長期化に伴い生じた2021年度・2022年度の遅れを概ね取り戻すことができたもの考えられる。機を逸してしまったことから研究計画の段階で想定していたインデプスインタビュー調査の実現は困難になってしまったものの、アンケート調査は概ね予定通り実施し、さらに関心を共有する他の研究者と共同で、地域におけるリスク・コミュニケーションに関するワークショップの実現にも至っている。当初はこうしたアクション・リサーチの実施を予定していなかったが、リスク・コミュニケーションを社会実装するためには適切な方法であると考えられ、したがって本研究は当初の研究計画に比しておおむね順調に進展しているといえる。
2024年度は、2023年度に取得したデータの分析、論文化に取り組み、その結果を基礎として再度テレビ局へのインタビュー調査を実施する。次年度は本研究の最終年度であることから、本研究全体で得られた成果や課題をまとめ、次の研究テーマに繋げていくための準備にも取りかかる予定である。
科学的知見をめぐるコミュニケーションの展望(2023年, 京都大学), 橋本純次「地域住民が考えるリスク・コミュニケーション」ワークショップ(2024年, いわき市), 鈴木 優香理, 坂田 邦子, 三浦 伸也, 久保田 彩乃, 橋本 純次「地域とともに考えるリスクコミュニケーション」ワークショップ(2024年, いわき市), 久保田 彩乃, 坂田 邦子, 三浦 伸也, 橋本 純次, 鈴木 優香理
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
IAMCR LYON23, Conference Papers
巻: n ページ: 1-12