研究課題/領域番号 |
21K13452
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
伊藤 理史 京都産業大学, 現代社会学部, 准教授 (70766914)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 生活保護 / 生活保護バッシング / 構造トピックモデル / 計量テキスト分析 / ヴィネット調査 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、生活保護厳格化を求める世論の主要な原因である不正受給認識に注目した上で、受給者評価の把握とそれを是正する新聞の生活保護報道の在り方を実証的に解明することである。第1に、不正受給認識の実態を把握するため、ヴィネット調査を用いてどのような属性の人が生活保護制度の「正当/不当」な受給者と評価されているか明らかにする(分析1)。第2に、不正受給認識を低下させる新聞の生活保護報道の内容を把握するため、構造トピックモデルを用いて記事内でどのように生活保護制度・受給者を表象しているのか時系列的に明らかにする(分析2)。第3に、サーベイ実験を用いて実際に不正受給認識を低下させる生活保護制度・受給者表象を特定する(分析3)。 2022年度は、3つの分析課題のうち、主に分析2について次のような進捗を得ている。まず、1986年9月から2021年8月までの35年間の新聞記事(読売新聞、朝日新聞、日本経済新聞の3社)について、構造トピックモデルを使用して記事内容(トピック)の推定および時系列トレンドを確認した。分析の結果、全体の傾向として、近年になるほど「個人」に焦点を当てたトピックが出現しやすいことを明らかにした。以上の結果については、第20回福祉社会学会大会(同志社大学/オンライン)の「統計的研究」部会で口頭報告し、参加者から貴重なコメントを得た。また分析1についても、ヴィネット調査を企画・設計するための情報収集を継続中である。さらに無作為抽出の全国調査によるポピュリスト態度の規定要因分析や、生活保護受給率が高い地域である大阪市調査による住民投票の投票行動の規定要因分析も行った。得られた知見については、今後実施するヴィネット調査やサーベイ実験の企画・設計時に参考とする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
分析2の構造トピックモデルによる新聞記事分析で一定の進捗を得ており(学会報告が完了して論文執筆中)、また分析1のヴィネット調査の企画・設計もスタートさせているものの、ヴィネット調査の実施には至っておらず、やや遅れていると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、分析1のヴィネット調査と分析3のサーベイ実験を実施予定である。実施後にはデータの整形・クリーニングと分析を行い、研究成果を学会報告と論文の形式で発表していく。 また分析2についても、学会報告で得たコメントを踏まえて論文執筆中であり、2023年度中の投稿を目指している。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、ヴィネット調査の実施を延期したためである。これは行動規制が緩和される等、社会生活におけるコロナの影響が減少していく中で、コロナ禍よりもポスト・コロナ社会において調査を実施した方が良いという判断にもとづく。 使用計画としては、2023年度と2024年度の適切なタイミングで行う、ヴィネット調査とサーベイ実験に対して主に使用する予定である。
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