研究課題/領域番号 |
21K13453
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
伊東 香純 中央大学, 文学部, 特別研究員(PD) (80899039)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 精神障害 / グローバル / 社会運動 / 低開発 / 当事者 |
研究実績の概要 |
本研究で対象とするアフリカ、アジア、中南米地域の精神障害者の運動のうち、今年度はアフリカ地域を主な対象として研究を進める計画であった。当初は、アフリカ地域に渡航してフィールドワークを予定していたが、新型コロナウイルス感染症の流行により渡航できなかった。そこで、国内にいながらできる調査を進めることとし、研究対象をアフリカと比較して日本でも調査を進めやすいアジア地域にも拡大した。 アフリカ地域については、精神障害者の社会運動組織で活動した経験を持つ6名にオンラインでインタビューを実施した。その結果、グローバルな運動に参加する主な経路として、西欧や北米を対象としたこれまでの研究の結果から想定してきたものとは、異なる経路があることが示唆された。加えて、2022年度以降のフィールドワークをより充実したものにするための、各地の運動団体に関する情報や人脈を得ることもできた。アジア地域については、日本の精神障害者の運動に関する資料を、専門的知識を持つ人の支援を得て整理した他、東京の運動に関するインタビュー調査を実施した。 また、5年間のプロジェクトの初年度である今年度は、今後効率的に研究を進めていくための研究環境を整えた。ノートパソコンや文房具など必要な備品を揃えた。 今年度の調査の成果は、これから査読付き論文などとして発表していく準備を進めているところである。その準備として、本研究プロジェクトの土台となるこれまでの研究をまとめた書籍を出版し、合評会やセミナー等で関連する研究者や活動家からコメントをもらった。これまでの調査の成果を2本の査読付き論文としても公表し、本研究を進めるための研究の整理ができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で対象とするアフリカ、アジア、中南米地域の精神障害者の運動のうち、今年度はアフリカ地域を主な対象として研究を進める計画であった。当初は、ウガンダ、ザンビア、ガーナへの渡航を予定していたが、新型コロナウイルス感染症、特にオミクロン株の流行により、現地でのフィールドワークはできなかった。 そこで、オンラインでインタビュー調査をおこなう計画に切り替え、アフリカ地域の5つの国で活動する6名の活動家にインタビューを実施できた。6名は、いずれもアフリカ規模、世界規模の精神障害者の組織で活発に活動してきた人物である。インタビューでは、それぞれの活動家がグローバルな運動に関わるようになる経緯を聞き取ることができた。さらに、5か国の活動家にインタビューできたため、次年度以降のフィールドワークに必要な情報や人脈を当初想定していた以上に得ることができた。 アフリカ地域の精神障害に関する文書資料の収集も、国内で入手できる書籍や論文の情報を基に実施したが、大きな成果を得られなかった。現地に行って資料収集することが必須であることが明らかになった。 また、重点的に調査する地域をアジア地域にも拡大し、日本国内の運動について資料の整理とインタビュー調査を実施した。日本の全国規模の運動に関する資料を整理し、今後アジア太平洋地域の調査を進める準備ができた。 研究成果の発表について、本研究の土台である博士論文を基にした単著を出版した。出版後には、合評会やNGOのセミナー等で内容を紹介、議論する機会も得た。さらに、査読付き論文が2本掲載された他、障害学、医療社会学の学会での報告もおこなった。これらで得たコメント等は、本研究の成果を発表していく上で活かせるものである。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で対象とするアフリカ、アジア、中南米地域の精神障害者の運動のうち、2022年度は今年度に引きつづきアフリカ、2023年度はアジア太平洋、2024、2025年度は中南米地域に、特に力を入れて調査を進める計画である。 今年度の予備調査により、2022年度はウガンダ及びザンビアの首都を中心とする地域でのフィールドワークが有効であり可能であると判断し、調査許可の取得等の準備を進めている。それぞれの国に2週間強滞在し、現地の精神障害者組織の関係者にインタビューを実施するとともに、文書資料の収集をおこなう。インタビュー対象者として予定している人の中には、既に調査協力の承諾を得られている人もいる。 アジア地域については、地理的な近さや現在の運動の活発さにより、比較的調査を進めやすい地域といえる。通訳者としての支援等を通じた参与観察等の方法で、継続的に情報収集をしていく。中南米地域については、未だ最も調査の進んでいない地域といえる。この地域の活動のほとんどは、スペイン語でおこなわれているため、現地でのフィールドワークに向けて語学学習を継続するとともに、英語でできる情報収集や人脈形成を事前に進めておく。 研究成果の発表について、2021年度及びそれ以前の調査の成果を基にした査読付き論文の投稿を予定している。2022年度は、日本語、英語の学術雑誌にそれぞれ1本ずつ投稿する計画で執筆を進めてきた。論文投稿に向けた、社会学、医療社会学、障害学の国内学会、国際学会での報告も計画している。加えて、ウェブサイト上での収集した情報の整理、公開もこれまで通り継続していく。
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