国内外の大学における聴覚障害教員への支援体制ついて、現状では十分と言うに程遠く、既存研究は聴覚障害教員の支援体制の乏しさを訴えている一方、聴覚障害教員の授業を受けた大学生の利益や価値観についてはあまり研究されていない。しかし、聴覚障害教員の支援体制を拡充するためには、聴覚障害教員への支援による教員の能力の向上、その授業を受けた学生に対する教育効果を実証することが重要と考える。本研究では、まず、聴覚障害教員の授業を受けた学生に対する説明的デザイン分析を用いて、聴覚障害教員の授業を受けた学生に対して、授業の価値を評価した。次に、聴覚障害教員に対する探索的デザイン分析を用いて、教員による教育的貢献と支援の費用対効果を分析した。その結果、聴覚障害教員の授業に対する学生の評価額は高く、聴覚障害教員による教育的貢献の重要性が明らかになった。さらに、聴覚障害教員と学生の両方とも、聴覚障害教員に対する支援制度の資金確保と拡大、手話通訳者の養成と拡大、情報保障の重要性の理解が必要であると提案が挙げられた。最終年度は、上記の研究成果として、ウィーン大学(オーストリア)の国際学会、ヘリオットワット大学(英国)、ヨーク・セント・ジョン大学(英国)、セントラル・ランカシャー大学(英国)、ウルバーハンプトン大学(英国)において、招待講演等を行なった。また、研究成果については、「Enhancing the Role of Deaf Faculty Members in Higher Education: An International Comparison(パルグレイブ・マクミラン出版社 2024年3月25日発行)」の英語著書を出版した。来年度は、Association of Sign Language Interpreters and Translatorsにて招待講演の予定である。
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