研究課題/領域番号 |
21K13460
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
佐藤 桃子 島根大学, 学術研究院人間科学系, 講師 (10792971)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 社会的養護 / ファミリー・グループ・カンファレンス / 子どもの権利 / 地域福祉 |
研究実績の概要 |
本研究では、社会全体で子どもを育てる社会的養護の理念がそれぞれの国でどのように根付いているか、特に当事者参画の手法ファミリー・グループ・カンファレンス(以下FGCとする)の手法を通じて国際比較研究を行う。当事者が参画することが難しい児童福祉において、①家族やコミュニティの文化的ストレングスを活かす実践、②当事者主体の意思決定支援という二つの大きな特徴をもつFGCに注目し、諸外国と日本との比較を行う。 2021年度は、文献研究をもとに北欧諸国におけるFGCの取り組みを論文「北欧におけるファミリー・グループ・カンファレンスの特徴と展開」(『島根大学社会福祉論集』第8号)にまとめた。本論文は、FGCのような当事者参画と地域のネットワークを活かす実践が日本の地域社会に根づく方法を考察するうえで、北欧諸国でのGCの広がりと地域の特徴を分析する材料となるものである。本稿で北欧の実践報告や、デンマークの自治体の実践事例などを検討した結果、北欧諸国で展開されている「子どもの視点」を重視したFGC 実践は、支援計画作成段階に当事者である子ども自身を参画させるということよりむしろ、ミーティングのプロセスにおける子どもの満足感を高めることによって支えられていることが分かった。 このことから北欧諸国ではFGC実践において「子ども本人の参画」が重視されていることが特徴的であることが分かる。今後諸外国における当事者参画の実践について分析するにあたって、子ども本人の参画がキーワードとなる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、北欧諸国と英国、日本のFGC実践について、社会背景や人々の認識を描き出すために、実践に関わる人たちのインタビュー調査と現地での資料調査を中心としたフィールド調査を予定している。 2021年度は日本国内で行われている実践の調査と、家族を支える地域資源についてインタビュー調査を行うため、神奈川・大阪でのフィールド調査を計画していたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で国内出張に大きく制限がかかっていたため、実際にフィールド調査に出かけることが困難であった。そのため、文献調査により北欧諸国の当事者参画の取り組みをまとめるに留まっている。今後、国内のFGCと関連する当事者参画の実践について、当初予定していた地域以外での実践を取り入れつつ聞き取り調査を進める。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果を活かし、FGCなどの当事者参画の取り組みが日本国内や諸外国でどのように展開され、評価されているかを分析することによって、各国での親族や地域のネットワークの強みを活かす子どもへの支援がどのように機能しているかを明らかにする。 FGCのと同様に当事者を参画させる社会的養護の仕組みとして、米国から紹介されたラップアラウンドや、ピアサポートの取り組みについて取り上げ、地域と社会的養護のネットワークを促進する手法についてフィールド調査を通して考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
出張経費として旅費を計上していたが、感染症拡大のため出張ができず旅費を繰り越すことになった。フィールド調査を次年度以降に行う。
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