研究課題/領域番号 |
21K13461
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
平 将志 九州大学, 附属図書館, 助教 (60812922)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 構造的不況都市 / 生活保護費の返還問題 / 失業対策事業 / 生活困窮者救済 / 組夫 / 「エネルギー革命期」 |
研究実績の概要 |
本年度は、前年度に引続き、おもに北海道と長崎県において調査を実施した。まず、北海道では、前回調査を実施した美唄市において、生活保護制度や失業対策事業に関する資料を入手した。また、芦別市議会では議会提出資料から生活保護制度の運用に関する資料を撮影した。つぎに、長崎県では、佐世保市議会所蔵資料のほか、佐世保市立図書館や長崎市立図書館などで『長崎新聞』や『長崎時事新聞』などの地方紙から、生活困窮者救済に関する記事について複写を行った。後述するように、今年度の調査実施地域については、年度内に査読付論文に投稿することができた。 つぎに、本年度には従前に掲載が決定した2論文のほか、「生活保護制度における福祉縮減と非難回避戦略ー福祉縮減期を事例として」が『社会福祉学』63(2)に、「構造的不況都市における生活困窮者救済―高度成長期の長崎県佐世保市を事例として」が『九州社会福祉学』第19号にそれぞれ掲載された。前者では、福祉縮減期である1980年代において、生活保護制度の福祉縮減においても、年金制度のように非難回避戦略が用いられたことをあきらかにした。後者では、生活保護制度に対する「第二次適正化」政策により、自治体が、厚生省と住民との間で板挟みとなり、その結果、生活保護費の返還問題が生じたことを論じた。 最後に、『社会事業史研究』には、今年度に実施した美唄市の調査をもとにした論文を投稿したが、査読結果が「要再査読」となったため、現在、再投稿に関する準備を進めている。このほか『エネルギー史研究』に「福岡県福祉課『生活保護法による生活扶助費取扱指針』」、『石炭研究資料叢書』に「福岡県知事室企画局『福岡県財政窮乏の原因探究』」について資料紹介・翻刻を行った。 以上が、本年度における研究成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、日本社会福祉学会九州地域部会、日本社会福祉学会及び政治経済学・経済史学会において個別報告を行った。加えて、『大原社会問題研究所雑誌』、『社会福祉学』、『戦後社会福祉の歴史研究と方法―継承・展開・創造 第2巻〈理論・総括〉』、『九州社会福祉学』に4本の論文が掲載された(すべて査読付)。 以上から、本年度の研究状況は、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、先行研究で検討対象とされていなかった佐賀県産炭地について調査を実施するほか、『西日本新聞』や『夕刊フクニチ』などの地方紙を中心に、生活困窮者救済に関する記事について複写を行う。 これまでの調査によって得られた資料を素材として、北九州市、田川市のほか、佐賀県産炭地の生活困窮者救済に関する分析を行い、査読付き雑誌に投稿する。加えて、社会経済史学会における個別報告が決定しており、報告後、できる限り早急に査読付き雑誌に投稿するようにしたい。
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