研究実績の概要 |
英国ノッティンガム大学のStephen Joseph博士との国際共同研究により、日本と他の国の状況を比較することが可能なヤングケアラー尺度を作成した。この尺度の一部を用いて大規模なヤングケアラー存在率調査を行った。首都圏の一つの都道府県における私立全日制中学校・高等学校の団体の協力により、加盟校に通う 5,000 人の中高生に対して調査を実施したところ、ヤングケアラーの存在率が 7.4%と推定された。これは標準化されていない尺度で調べた日本の調査結果と概ね同じ割合であった。ヤングケアラーは、そうでない人に比べて不安や抑うつが強いこともわかった。一方で、ヤングケアラーは、そうでない人に比べて、向社会性が高いこともわかった(Kanehara 2022)。 調査研究で得られた結果に基づき、 普及と実装研究(dissemination and implementation[D&I]研究)として、ヤングケアラー情報のページを開設し、 学校関係者・家族向け冊子と、当事者向け冊子を作成・掲載した。学校関係者・家族向け冊子では、見えにくいヤングケアラー状況、ヤングケアラーの割合、ヤングケアラーの声などを紹介し、教員としてできること、ヤングケアラーの助けになることを掲載した。当事者向け冊子では、ヤングケアラーとはどんな状態のことかについて丁寧に説明し、相談先について紹介した。ヤングケアラーサポートに関する中高生向け講義を実施したり、学校のスクールカウンセラーや養護教員に授業をしてもらえるための研修会を2022年度に3回、2023年度に2回、フォローアップ研修を2023年度に1回実施し、全国から学校関係者が参加した。 他に、2023年度には、研究成果の[D&I]研究として、得られた知見に基づく、ヤングケアラーを含む思春期若者向けの心理支援を実施した。
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