研究課題/領域番号 |
21K13477
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研究機関 | 淑徳大学 |
研究代表者 |
東田 全央 淑徳大学, その他部局等, 助教 (60892528)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 国際ソーシャルワーク / インディジナス・ソーシャルワーク / 地域・民族固有の知 / スリランカ / 国際開発ソーシャルワーク |
研究実績の概要 |
本年度当初からコロナ禍による海外調査進捗の遅延があったものの、最終的にはおおむね計画どおり、あるいはそれ以上の進捗があった。第一に、国境を越える諸課題に対して草の根レベルから取り組む国際ソーシャルワークに関して、実践家の主観的経験と語りに焦点を当てた調査分析をさらに進めた。青年海外協力隊ソーシャルワーカー経験者の語りに関する先行研究の知見を参照しながら、社会的表象理論の視点を用いて国際ソーシャルワークについて考察した論稿が雑誌に掲載された。加えて、国際ソーシャルワーク関連の研究会が実施したヒアリング調査の報告書作成において、本研究での経験を生かしながら、編著者の一人として取りまとめた。 第二に、スリランカのソーシャルワークにおけるインディジナスな知と実践についての探求を現地関与者とともに進めた。昨年度にソーシャルワーク実践家を対象に実施した面接調査に基づく共著論文が原著として国際誌に掲載された。また、スリランカの関係者との協議も進めた。遠隔による2回の事前協議を経て、2023年1月に本研究プロジェクトとしては初となる対面での円卓会議を開催した(スリランカ・ソーシャルワーク専門職協会および国立社会開発機関との共催)。これまでの研究成果を関係者と共有したうえで、実践指向の新たな共同研究計画について検討した。 第三に、グローバル・サウスにおける地域・民族固有の知をめぐるソーシャルワークと国際協力の関係性について考察を深めた。その成果の一例として、これまでの研究知見をまとめて、日本社会福祉学会にて口頭発表するとともに、所属機関年報に研究ノートを寄稿した。また、国際ソーシャルワーク教育に関する原著が国際誌に掲載された他、国際開発実践に関して分担翻訳した書籍が発刊された。さらに、日本において当事者とのソーシャルワーク活動から生成された実践理論の教育への活用について口頭発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍において、本研究のコンポーネントにより進捗度が異なるが、全体としてはおおむね順調に進んだ。第一に、国内調査について、元・青年海外協力隊社会福祉関連職種(ソーシャルワーカー隊員等)の経験に関する分析を完了し、論文等として発表することができた。第二に、スリランカにおけるソーシャルワーカーの経験に関する調査分析を進め、共著論文として公表することができた。第三に、コロナ禍によりスリランカでの知見の共有と協議は遅れていたが、複数回のオンライン協議を経て、初となる現地会合を実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度には、国際ソーシャルワークにおける地域・民族固有の知を含む教育や実践に関して議論の総括を行うとともに、本研究知見を活用した新たな研究ニーズを模索していく。とくに、スリランカのソーシャルワークにおけるインディジナスな知と実践についての探求を現地や他国の関与者とともに進める計画である。スリランカ国内の政治経済的状況等をみながら調整したうえで、関係者と会議を開催し、研究知見の共有や対話の場を設けたい。とくに、必ずしも言語化されていないかもしれないローカルなソーシャルワーク実践の知を学びあうときに、どのような視点が必要かについて理論的な整理と考察を行いたい。ただし、スリランカ国内情勢に顕著な不安定さ等があった場合は、遠隔での協議および調査へ切り替えるなど、実施可能な方策について検討する。加えて、本研究の知見を踏まえて、国際開発ソーシャルワークに関するテキストの改訂を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により延期していた海外渡航が年度途中で可能となり、前倒し使用申請などによる調整を行った。結果的には当該年度において若干の未使用額のみが発生した。
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