最終年度には計画以上の進捗があり、結果、当初の全体的な目標を達成することができた。第一に、国境を越える諸課題に取り組む国際ソーシャルワークおよび国際開発ソーシャルワークに関して、知見の整理を行い、考察を深めた。その波及的な成果として、拙著書籍等にその知見を反映することができた。 第二に、スリランカのソーシャルワークにおける広義の地域・民族固有の(インディジナスな)知と実践についての探求を現地の関与者等とともに進めることができた。5月にバングラデシュで開催された国際会議において、ソーシャルワークの実践知に関する国際セッションを共同企画し、スリランカ等からの登壇者との調整を行ったうえで、遠隔での議論を試みることができた。その経験を踏まえて、11月にはスリランカにてソーシャルワークの実践知に関する国際会議を現地機関とともに開催することができた。これまでの研究成果を関係者と共有したうえで、地域社会の文脈に根ざした実践知を共同的に探索した。2024年3月現在、その成果について、関係者とともに、文書としての取りまとめを行っている。 第三に、本研究の主要テーマにかかわる広義の地域・民族固有の知をめぐる開発途上国におけるソーシャルワークと国際協力の関係性について考察を深めた。発展的な研究として、アジアにおいて広がりを見せている仏教ソーシャルワークを事例とし、国際ソーシャルワークの視点から考察を行った。また、本研究の知見を活かして、事例国のスリランカのみならず、モンゴルのソーシャルワーク関係者との共同的セッションを試行的に開催することができた。さらに、本研究の知見をよりどころにしながら、日本の精神保健福祉領域における実践知のソーシャルワーク教育への統合およびその国際的示唆についても論文化することができ、国際誌に掲載された。
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