研究課題/領域番号 |
21K13493
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
伊澤 千尋 東京工科大学, 応用生物学部, 助教 (10757769)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 金属含有シリカ / メソポーラスシリカ / 紫外線ケア化粧品 / 紫外線防御剤 |
研究実績の概要 |
鉄含有シリカは無機系紫外線吸収剤として化粧品への応用が期待されている。本年度は導入する金属イオン種が吸光特性に与える影響について検討した。酸化物が化粧品顔料として実用化されている金属として、チタンやアルミニウムを選択し、単一または複合してメソポーラスシリカに導入を試みた。 既報を参考にチタン含有メソポーラスシリカを合成したところ、鉄の場合に比べて紫外光吸収領域が広く、可視光吸収もほとんどないことがわかった。化粧品用オイルに試料を分散させ、塗膜状態での透過スペクトルを測定したところ、現行の無機系紫外線防御剤である酸化チタンと比較して、高い紫外線防御能を示した。しかし、可視光の透過率が低いことから、透明性が低いといえた。今後は粒子形態の制御により分散性を向上させることで透明性の向上を目指す。 鉄とチタンを組み合わせて導入した結果、鉄のみの場合と比較して紫外光吸収領域が拡張することが明らかになった。しかし、可視光吸収が増大し、粉体が着色した。鉄の代わりに同じ3価の金属イオンであるアルミニウムをチタンと組み合わせたところ、可視光吸収の増大は見られなかった。これらのことから、金属イオンの組み合わせではなく、pH調整剤が吸光スペクトルに影響していると考えた。 鉄含有シリカ合成時のpH調整剤には水酸化ナトリウムを使用してきた。しかし、ナトリウムイオン存在下ではチタンはシリカ骨格内に導入されにくいことから、チタンを導入する場合は有機系塩基を用いた。塩基の種類が吸光スペクトルに与える影響を検討するため、有機系塩基を用いて鉄含有シリカを合成したところ、可視光吸収が増大した。このことから、pH調整剤の種類が金属含有シリカの吸光スペクトルに影響することが明らかとなった。今後は可視光吸収を低減させるpH調整剤を検討していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、導入する金属イオンがメソポーラスシリの吸光スペクトルに与える影響を検討できている。その結果、これまで注目されていた鉄含有シリカよりも幅広い紫外線を吸収でき、着色の少ない粉体を得られたことから、本研究は順調に進展しているといえる。 さらに、研究過程で、これまで注目していなかったpH調整剤の種類が吸光スペクトルに影響を与えることが明らかになった。pH調整剤の影響についても検討を加えることで、今後計画以上に研究が進展すると期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、未検討の亜鉛などについても検討を進め、金属イオン種が吸光スペクトルに与える影響をさらに検討する。また、チタノシリケートなどの合成に用いられるpH調整剤を中心に、吸光スペクトルに与える影響を検討する。 同時に透過スペクトルについても検討し、試料の分散性に影響を与える要因について明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請時に購入を予定していたpHメーターが廃版となり、購入を保留にしている。今後pH自動制御装置と組み合わせて購入する予定なので、使用可能なものを業者に問い合わせ中である。
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