研究課題
精神疾患にはストレスを受けることによる環境的要因や遺伝的要因での発症がある。自閉症、統合失調症や注意欠陥・多動性障害(ADHD)などが挙げられるが、その症状は様々である。これらの精神疾患に共通して確認される行動が常同行動である。常同行動とは、ある一定の行動が増える異常行動であり、同じ場所を過剰に動き回ることや、自己を傷つけ続ける行為などがある。しかしながら、常同行動の詳細なメカニズムに関しては未解明である。本研究では普段から摂取可能な栄養因子による常同行動の制御が可能な経路を新規探索することを目指すために、神経基盤の解明を行う。普段から摂取可能な栄養因子(L-ならびにD-アミノ酸)による常同行動の制御が可能な経路を新規探索し提唱することができれば、予防や緩和に繋げることが期待できる。当該年度では、前年度に引き続き飼育室の異常によりマウスの導入が遅れたため、3次元深度センサを用いた3D撮影装置の検討をおこなった。また、マウスの飼育ができなかったものの、この期間に他の動物種の常同行動について調査を進めることができた。その結果、常同行動が生じるパターンについて新たな仮説を見出した。そのため、今後は常同行動のモデル動物を作出し、得られたモデル動物の妥当性について評価するとともに、当該年度中に導き出した新たな仮説について検討する。また、常同行動発現のスイッチについて特定の神経を活性化させる技術であるオプトジェネティクスにより神経基盤の特定を行う。特にNMDA受容体に関連する神経に着目し研究を遂行する。
3: やや遅れている
当該年度では、前年度に引き続き飼育室の異常により飼育開始時期が大幅に遅れている。長期飼育の試験であるため、再度異常が生じると全て中止となってしまう恐れがある。そのため、飼育室について問題がないことを慎重に確認した上で開始時期を決定したことで開始時期が遅れている。現在は、単離ストレスを与え長期飼育をスタートしている。3次元深度センサを用いた3D撮影装置の解析方法については引き続き確立を進めている。単離ストレスを負荷し常同行動を発現させたモデルマウスの確立を行い、妥当性の検証まで行う予定であったが、動物飼育室の異常により予想よりも進まなかった。しかしながら、その間他の動物種による検討を進めることができたため、新たな仮説を提唱できる可能性があり研究の発展に繋がった。そのため、進捗状況としては予定よりもやや遅れていると判断した。
環境的要因としてマウスに単離ストレスを与えることで、常同行動を示すマウスと示さないマウスに選抜する。常同行動を示さないマウスと示すマウス両者の行動パターンについて3D撮影装置を用いて撮影を行う。行動解析の確立について課題が残されているため、これについても引き続き行う。これまでの研究から、GRIN1のノックダウンにより前脳におけるNMDA受容体が減少すると常同行動が生じやすくなることが報告されている。GRIN1とは、 NMDA受容体のサブユニットであり、グリシン結合部位を持つ。このグリシン結合部位にはD-セリンがコアゴニストとして働くことも示唆されており、このGRIN1をノックダウンさせたモデルマウスにおいて、NMDA受容体の活性が低下し常同行動および多動性を示すことが報告されている。そのため、GRIN1 mutationマウス を用いて(2023年度理研より購入予定)、3D撮影装置による行動パターンの評価を行う。これにより、常同行動が発現する前兆が確認されるか否かについても検討を行う。また、作出したモデル動物について3D撮影装置の他にもオープンフィールドテスト、高架式十字迷路試験、物体認知試験をおこない、常同行動が生じやすい特徴について検討する。最終的には常同行動を引き起こすスイッチを探索する。オプトジェネティクスの手法を用いて神経基盤の特定を目指す(2023年度オプトジェネティクス関連用品購入予定)。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
Journal of Pet Animal Nutrition
巻: 25 ページ: 80~86
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Molecules
巻: 28 ページ: 23~23
10.3390/molecules28010023