精神疾患にはストレスを受けることによる環境的要因や遺伝的要因での発症がある。自閉症、統合失調症や注意欠如・多動性障害(ADHD)などが挙げられるが、その症状は様々である。これらの精神疾患に共通して確認される行動が常同行動である。常同行動とは、ある一定の行動が増える異常行動であり、同じ場所を過剰に動き回ることや、自己を傷つけ続ける自傷行為などがある。しかしながら、常同行動の詳細なメカニズムに関しては未解明である。本研究では普段から摂取可能な栄養因子による常同行動の制御が可能な経路を新規探索することを目指すために、神経基盤の解明を行うことを目的とした。普段から摂取可能な栄養因子による常同行動の制御が可能な経路を新規探索し見いだすことができれば、予防や緩和に繋げることが期待できる。 前年度まで動物飼育室の異常によりマウスの飼育を開始することができなかったことから、当初の予定を大幅に変更する必要が生じた。当該年度からマウスの飼育が可能となったため、C57BL/6JおよびBALB/cの2系統のマウスに単離ストレスを負荷し、2ヶ月ごとに3D撮影装置を用いた行動試験やオープンフィールドテスト、高架式十字迷路テストを実施した。6ヶ月後に脳サンプル、血漿、および体毛についてサンプリングを行い遊離L-ならびにD-アミノ酸含量を測定した。また、前年度までマウスの飼育ができなかったため、他の動物種における常同行動と栄養学的関連性について調査を進めた。その過程で、常同行動と興味・関心の有無に関連性が示唆されたことから、当該年度ではマウスにおける興味・関心と行動学的ならびに栄養学的差異に関する検討を同時に進めた。 本年度の10月に現所属大学への異動となったため、あらためて立ち上げの必要が生じたことから神経基盤の特定までには至らなかったが、本研究課題終了後も引き続き神経基盤の特定を行う。
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