研究課題/領域番号 |
21K13500
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研究機関 | 宮城大学 |
研究代表者 |
赤澤 隆志 宮城大学, 食産業学群, 助教 (00882276)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | オリーブポリフェノール / エマルションゲル / 代替肉 |
研究実績の概要 |
本研究は、脂身代替食品の開発に向けて、ゼラチンエマルションゲル(EG)の物性とフレーバーリリースに及ぼすモクセイ科植物由来ポリフェノールの影響を明らかにすることである。2022年度は【1】豚脂身の加熱調理による物性変化、【2】EGの乳化条件の検討、【3】オリーブポリフェノールoleaceinがEGの物性に及ぼす影響を調べた。 【1】豚背脂の茹で調理(30~180分間)による物性の変化を調べた。茹で時間の経過に伴って、破断応力及び初期弾性率が減少した。微細構造の観察から、脂肪細胞を取り囲む結合組織膜が薄膜化していた。タンパク質の分析により、結合組織中のコラーゲン鎖が断片化することで、機械強度が弱まることが明らかとなった。 【2】50%(w/v)大豆油と2.5%(w/v)ゼラチンの混合液の乳化条件を検討した。ポリトロンホモジナイザーを使用した乳化(5000 rpm、2min)によって、【1】で得られた加熱調理脂身の油滴の直径(50~80 μm)と類似したEGが得られた。 【3】各種クロマトグラフィーの条件検討によって、オリーブ葉(100 g)からoleacein(約0.4 g)を精製することができた。5mM oleaceinの添加は、EGの破断応力を20倍に増加させ、180分間茹でた脂身と近い値となった。しかし、oleaceinの添加はEGの破断歪率も増加させ、脂身と比べ歯切れの悪いゲルとなった。Oleacein添加EGの破断歪率を低下させるため、5種類の多糖類の添加効果を調べた結果、キトサンの添加によって破断歪率が低下した。 以上の結果から、Oleacein及びキトサンを添加したEGは、豚脂身の機械強度に類似することが明らかとなった。また、oleacein添加EGを加熱すると、褐変及びオフフレーバーが発生するといった新たな問題点が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
模擬脂身の開発に必要な情報となる、加熱調理した脂身の物性及び微細構造を明らかにすることができた。また、乳化条件、oleacein及び多糖類の添加量を検討し、茹で調理した脂身の物性と類似したEGの作製条件を明らかにすることができた。Oleacein添加EGを加熱することで生じる問題点(褐変とオフフレーバーの発生)に関しても、解決方法を見出しつつある。これらのことから、順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の研究によって明らかとなった問題点(加熱による褐変化及びオフフレーバーの発生)の解決に取り組む。褐変化の抑制については、各種抗酸化物質の影響を調べる。オフフレーバーについては、原因物質を質量分析計で特定し、発生のメカニズムを探る。脂身とOleacein添加EGの口あたりや咀嚼特性を比較するため、咀嚼中の感覚の変化を計測する官能評価(TDS)を行う。また、レオロジー測定機器を用いた咀嚼モデル装置を開発し、咀嚼を模倣した連続圧縮によってEGから放出されるトリグリセリド量や食塊の形状から、口あたりや咀嚼特性を客観的かつ定量的に評価する。また、咀嚼模擬装置とアンビエント質量分析装置を接続したフレーバーリリースの分析システムを構築し、連続圧縮によるEG中の香気物質の放出挙動を解析する。以上の実験から、oleaceinがEGの咀嚼特性や口あたり、香気物質の放出挙動に及ぼす影響を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症まん延及び世界情勢の不安定化により、購入予定の物品の調達時間が長期になり、本年度中の入手を断念したため。研究経費は、咀嚼模擬装置の開発に必要なヘリウムガス及びDARTMSとの接続パーツ(金属管)等に使用する。
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