研究課題/領域番号 |
21K13509
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研究機関 | 秋田県総合食品研究センター |
研究代表者 |
佐藤 友紀 秋田県総合食品研究センター, 醸造試験場, 研究員 (40807723)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | D-アミノ酸 / 脂質代謝 / 発酵食品 / 脂肪肝 |
研究実績の概要 |
ヒト肝がん由来HepG2細胞を脂肪酸処理し、細胞内に脂肪滴を蓄積させることで脂肪肝モデル化した。HepG2細胞における脂質蓄積への各D-アミノ酸の効果を検証した。脂肪酸存在下において、14種類のD-アミノ酸(Ser、Ala、Lys、Leu、Val、Ile、Glu、Gln、Arg、His、Thr、Phe、Asp、Pro)でHepG2細胞をそれぞれ処理したところ、D-Ala、D-Ser、D-Argによる脂質蓄積抑制効果が特に優れていた。L-アミノ酸と効果を比較するため、D-AlaとL-Ala、D-SerとL-Ser、D-ArgとL-Argによる脂質蓄積抑制効果を比較した。その結果、ArgはD体とL体で効果に差異は認められなかったが、AlaとSerはL体に比べて、D体による脂質蓄積抑制効果が優れていた。 D-Alaによる脂質蓄積抑制作用の機序をL-Alaと比較して明らかにするため、HepG2細胞を脂肪酸存在下でD-AlaまたはL-Alaで処理し、遺伝子発現を評価した。その結果、L-Alaに比べてD-Alaで強く制御される脂質代謝関連遺伝子が見出された。また、D-Alaによる脂質蓄積抑制作用とリポファジー(オートファジーによる脂肪滴分解)の関連性を明らかにするため、D-Ala処理したHepG2細胞におけるオートファジー活性をウェスタンブロッティングによるマーカータンパク質の検出によって評価した。その結果、オートファジーの活性指標であるLC3-IIはD-Ala処理では増加せず、オートファジーの基質であるp62の減少も認められなかった。したがって、HepG2細胞においては、D-Alaによる脂質蓄積抑制効果はリポファジーとは異なる機序による可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の課題として、D体に選択的な脂質蓄積抑制作用を示すアミノ酸を見出すことができるか、という点が大きかった。本年度の研究により、AlaとSerにL体と比較してD体に選択的な脂質蓄積抑制作用を見出すことができた。 また、Alaについては、D体とL体でそれぞれHepG2細胞を処理した場合に、異なる遺伝子発現が生じることを確認することができた。
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今後の研究の推進方策 |
まず、D-Alaについては実験動物を用いた評価を行う。具体的には、高脂肪食にD-AlaまたはL-Alaを添加した食餌をラットに供与し、組織データや生化学的データを取得する。 また、D-Alaと同様にD体に選択的な脂質蓄積抑制作用が認められたD-Serについても、遺伝子遺伝子発現をL-Serと比較して解析し、機序の解明を進める。
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