研究課題/領域番号 |
21K13509
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研究機関 | 秋田県総合食品研究センター |
研究代表者 |
佐藤 友紀 秋田県総合食品研究センター, 醸造試験場, 研究員 (40807723)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | D-アミノ酸 / 脂質代謝 / 発酵食品 / 脂肪肝 |
研究実績の概要 |
今年度は、ヒト肝がん由来細胞HepG2を用いた細胞実験で脂質蓄積抑制効果が認められたD-Alaについて、動物実験を行った。具体的には、正常ラット(Wistar、雄性)に高脂肪食、1.0%D-Ala添加高脂肪食、1.0%L-Ala添加高脂肪食のいずれかを4週間供与し、麻酔下で安楽死後、解剖を行った。体重、肝臓重量、精巣周囲脂肪、腎周囲脂肪について重量測定を行い、肝臓中のトリグリセリドと総コレステロールの量を測定し、血漿におけるトリグリセリドと総コレステロールの量を測定した。動物実験は秋田大学バイオサイエンス教育・研究サポートセンターで行った。 体重は各群で差はなかったが、通常の高脂肪食を供与したラットに比べて、高脂肪食にD-Alaを添加した群では摂食量が有意に多かった。一方、L-Alaを添加した高脂肪食を供与したラットと通常の高脂肪食を供与したラットでは、摂食量に差はなかった。D-AlaはL-Alaより非常に甘く、実験飼料における嗜好性を高めた可能性がある。脂肪組織として、精巣周囲脂肪や腎周囲脂肪を摘出し、重量を測定した。その結果、D-Alaを添加した高脂肪食を供与したラットでは、通常の高脂肪食を供与したラットに比べて精巣周囲脂肪と腎周囲脂肪の重量が有意に重かった。一方、肝臓重量、肝臓中トリグリセリド、肝臓中総コレステロール、血漿中トリグリセリド、血漿中総コレステロール、血漿中ALT、血漿中ASTはいずれの群間でも差はなかった。したがって、D-Alaには、細胞実験で認められた抗脂肪肝効果や、抗肥満効果が確認できなかった。これらの結果は、D-Alaの添加による摂食量の増加に起因すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞実験で認められた機能性について、実験動物レベルでその機能性について検証を行うことは極めて重要である。今年度は、動物実験を用いてD-Alaの抗脂肪肝効果を検討した。予想外のことに、D-Alaの添加によって摂食量が増加し、むしろ内臓脂肪は増加することが示唆された。期待通りの結果ではなかったが、実験動物レベルでのD-Ala摂取の効果を検証できたことは研究全体の進捗として重要である。 一方、現在、当センターの設備不良があり、実験量が制限されるため、最終年度への影響が懸念される。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、実験動物を用い、D-Serの摂取による抗脂肪肝効果について、L-Serと比較して検討する。一方、D-SerもD-Alaと同様に、L体と比較して甘味を有するD-アミノ酸である。したがって、D-Alaと同様に摂食量の増加が懸念される。そのため、動物実験前に実験飼料の検討を行い、各群で甘味の違いによる摂食量の違いが生じないように調整する予定である。
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