研究課題/領域番号 |
21K13512
|
研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
橘高 佳恵 横浜国立大学, 教育学部, 講師 (10827554)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 進歩主義教育 / 科学教育 / リテラシー / 創造性 / 公教育 / レッジョ・エミリア / レッジョ・インスピレーション / 美学 |
研究実績の概要 |
アメリカ合衆国の哲学者・教育研究者であり、ジョン・デューイを淵源とする学校改革の革新の系譜に重要な理論的基盤を提供したデイヴィッド・ホーキンス(1913-2002)について、リテラシーをめぐる彼の議論を辿った。あわせて、学校改革の革新の系譜の国際的なつながりをめぐり、アメリカの進歩主義教育とレッジョ・エミリアの幼児教育およびレッジョ・インスピレーションとのつながりを、「聴くこと」において示した。 ホーキンスについて、彼の学びの理論が科学および数学を大きな軸として展開したことはたしかである。しかし興味深いことに、教育に関する彼の代表的な著書のうちの1冊は、『リテラシーのルーツ』(The Roots of Literacy, 2000)と題されている。 ホーキンスは、現代における教育の目的を確認することから始める。それは、産業と科学の発展を経たこの世界の中で、なお「疎外」の状況に陥ることなく、「声を持つ」ということである。それでは、こうした教育において、リテラシーはいかなる役割を果たしているのか。 子どもは世界を「読む」。子どもは自然界を読み、人間の行為を読む。ホーキンスによれば、リテラシーのルーツはここにある。そして子どもは、自らの「読み」を考えとして表現している。その表現は、言葉によるとは限らない。話したり書いたりできるようになるはるか前から、種々の媒体において、子どもは表現しているのだ。そして、子どもの読みと表現を保障するのが「経験」(デューイ)である。ホーキンスの記す子ども中心の教室と、そこにおいて学ぶ子どもたちの姿は、こうした経験を保障してきた学校のありようを伝えている。 ホーキンスのリテラシー論は、狭義のリテラシー概念を越え、世界にかかわる子どもの創造的な営みに目を向けさせる。そして、その営みにおける美とアクチュアリティをめぐる問いを導いた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
文献資料の収集と検討を進めることはできたものの、新型コロナウイルスの流行により、渡米しての調査が叶わなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
文献資料の収集と検討を進め、ホーキンスの美学と公共哲学を明らかにするとともに、アメリカの進歩主義教育とレッジョ・エミリアの幼児教育を結ぶホーキンス特有の理論的貢献に迫る。国際会議での報告を行うとともに、延期していたアメリカ調査の計画を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの流行により、アメリカ調査が実施できなかったため、残額が生じた。流行が収束し、渡航の見込みが立ち次第、国際会議への参加や海外調査の費用として使用する予定である。
|